PR

ライフ ライフ

【朝晴れエッセー】海ほおずき・5月14日

 今はもう形を見ることもなくなったけれど、ある所にはあり、手にする人もいるのだろうか。それは海ほおずきで、私が子供のころにはあったねェと思い出す。

 私の古里は瀬戸内の島で父は漁師でした。漁から帰ると、竹かごや破れ網に包んだ、売り物にならない雑魚や貝などを台所の流しに移す。するとその中に象牙色した固まりが入っていた。それが海ほおずきで手にしたときのうれしさは今でも忘れない。あまり取れる物でないので大事にして近所の遊び友達に分けてあげたり、友達が持っているときは私も分けてもらったりした。

 時々、梅干しの汁に漬けて赤い梅干し色に染めて喜んだり。ハートの形をした海ほおずきは大きいのは20個ほど、小さいのは50個くらいがきれいに林立して固まりになっていた。1つをとり片方の面にハサミで小さな三角の穴をあけて、中の水気を出した皮を口の中に入れる。汐(しお)の味がして海のにおいがした。今この年だからかすかな味と香(か)に、なつかしさを感じるのかもしれない。

 「ヴイッヴイッヴイッ」と鳴らす。母に夜にほおずきを鳴らすと怒られた。ほおずきの音が蛙(かえる)の鳴く声に似ているので、蛇が餌になる蛙と間違えて音につられて家に入って来るから、ということだった。海ほおずき一つで子供のころが次々と連鎖してまぼろしのように思い出される。海の底で何になるのだろうか。まぼろしの海ほおずきよ。

河野 加津子 72 神奈川県横須賀市

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ