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【学ナビ】考古学一筋 ヒッタイトの鉄追う

アナトリア考古学研究所 大村幸弘所長
アナトリア考古学研究所 大村幸弘所長
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 □アナトリア考古学研究所・大村幸弘所長

 ■「学問でも仕事でも、やりたいことやり抜く」

 鉄と軽戦車を武器に古代オリエントで繁栄を誇ったヒッタイト帝国の謎を追いかける日本人がいる。中近東文化センター(東京都三鷹市)の付属機関でトルコにあるアナトリア考古学研究所の大村幸弘所長だ。故郷・岩手で発見した土器に魅せられ、父が収集する鉄の不思議に突き動かされた。以来、考古学一筋。「発掘に夢中で取り組んできた」と振り返る言葉から、“学びの原点”が浮かびあがる。(宮田奈津子)

 ◆土器の破片に魅了され

 大村所長の考古学者としての始まりは小学校4年生。父に勧められ、河川の合流地点を掘ったところ、土器の破片が出てきた。

 「縄文も弥生も知らなかった。理屈抜きで魅了され、歴史と考古学のとりこになった。大学の発掘調査を見学したり、遺物を学校で展示したり。父が南部鉄器の収集家で鉄製品の奥深さにも取りつかれた。いつも泥まみれで授業は上の空。でも、先生方は得意なことをほめてくれた」

 驚きは心の中で広がり続けた。高校生のときに、考古学者、ツェーラムの著書『狭い谷・黒い山~ヒッタイト帝国の秘密』を手に取った。鉄の歴史やアナトリア史へ関心が明確になった。大学生になり、「トルコ政府関係者を訪ねては、発掘したいと訴え続けた」と振り返る。

 ◆世界最古級の塊発見

 行動力に幸運が重なった。アンカラ大学への留学を経て、トルコ政府からヒッタイト帝国の中心地に位置するカマン・カレホユック遺跡の発掘許可が下りた。1985年に始まった調査は今も続く。2017年には世界最古級とされる鉄の塊が発見され注目されている。

 鉄は人類史上最大の発明の一つ。ヒッタイト帝国が、何らかの形で存在していた製鉄技術を独占し、繁栄の源泉にした。帝国が滅びると技術は拡散し鉄器時代へ突入していく-というのが通説だ。鉄の塊はヒッタイト以前の層から出土し、鉄鉱石を人為的に加熱したと推測されている。鉄鉱石自体も、他地域から持ち込まれた可能性がある。石の産地や鉄が生み出された経緯の解明は、世界史の通説に一石を投じるかもしれない。

 「残ったかけらの中にすごい物がある。良い物ばかりを見ても、世界は分からない。学問でも仕事でも、やりたいと思ったらやり抜くこと。学問は社会貢献のためにあるわけではない。夢中になって何かをやり遂げたとき、社会に貢献できることがついてくるのでは」

 【プロフィル】大村幸弘(おおむら・さちひろ) 1946年、岩手県生まれ。早稲田大学第一文学部西洋史科卒業後、トルコ政府給費留学生としてアンカラ大学言語・歴史・地理学部ヒッタイト学科留学。中近東文化センター勤務。85年からトルコのカマン・カレホユック遺跡などの発掘調査に従事している。

 【用語解説】カマン・カレホユック遺跡 トルコの首都アンカラから南東約100キロ、チャウルカン村に位置する。1985年から調査を行い、4時代(オスマン/ビザンチン、鉄器、後期・中期青銅器、前期青銅器)の文化層を確認。ヒッタイト勃興から繁栄、崩壊後の連続を通し、製鉄の歴史をひもとく。

 隣接地に98年、アナトリア考古学研究所を開設。考古学教室などを実施しているほか、日本庭園は結婚記念写真撮影スポットとして人気を集めている。

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