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カリフォルニアワインが放つ多彩な魅力 ~バイザグラスで広がる楽しみ(4)~

 カリフォルニアワインが進化を続けている。変化に富んだ地形や土壌、複雑な気象条件に加え、ワイン造りの伝統を継承しながら、醸造学などの学術研究や最先端技術、食の流行を柔軟に取り込んでいる。

 「お気に入りが必ず見つかる」といわれるカリフォルニアワイン。レストランなどでも、さまざまなワインを気軽に楽しめるスタイルとして、1杯から注文できるバイザグラスが定着している。個性豊かな造り手たちが生み出す魅力を4回にわたって紹介する。

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〈サステイナビリティ〉 環境保全型ワイン生産で見据える未来

 米国勢調査によると、カリフォルニア州は全米最多の人口を抱え、現在も人口は増加し続けている。1990年代には、宅地開発が都市部からブドウ畑が連なる郊外へと拡大し、農薬散布による健康不安や作業による騒音といった問題が発生した。時期を同じくして、水や電力確保を中心とした環境全般に関する意識も高まっていった。

 ワインの造り手たちは、こうした社会変化を敏感に読み取った。環境保全・社会的公平性・経済的実現性の3つ観点から、長期的に持続可能な開発を目指す考え方〝サステイナビリティ〟を掲げるようになった。水やボトルリサイクル、農薬の適正利用、非農業従事者との共存、認証制度の普及など、さまざまな試行錯誤を重ねている。

 カリフォルニアは今、地球環境を考慮したワイン生産の最先端を走り続けている。

◇フル・サークル・ファーミング(循環型農業)の実践

 「ナパヴァレーは、〈ナパ=ワイン〉というように、ワインだけを産出しているモノカルチャーの中心地といった印象がある。でも、ワインは昔から多様な農産物に囲まれ、複雑な環境の中で作られていることを知ってほしい。また、ワインは流行ではなく農業製品の一つ。人が身体に取り入れるものだからこそ、細心の注意を払っていかなければならない」

 ナパで初めてワイン醸造とオリーブオイル造りに取り組んだとされるオーガニックファーム、ロング・メドウ・ランチでブランドマーケティングを担当するジェフ・マイゼルさんは、そう指摘する。

1989年に創業したロング・メドウ・ランチ。マヤカマスの山中にあるワイナリー(左)は緑に囲まれている。飼育されているスコティッシュハイランド牛はワイナリーの象徴でもある
1989年に創業したロング・メドウ・ランチ。マヤカマスの山中にあるワイナリー(左)は緑に囲まれている。飼育されているスコティッシュハイランド牛はワイナリーの象徴でもある
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 ロング・メドウ・ランチはマヤカマス、ラザフォード、アンダーソンヴァレーの3地域に計約2000エーカーの広大な畑を所有し、循環型農業のフル・サークル・ファーミングを実践している。

 ブドウやオリーブをはじめ、約500種類の野菜・果物を栽培する。鶏や牛も飼育し、養蜂も手がける。食材はセントヘレナに開設しているアメリカ料理レストラン『ファームステッド・ロング・メドウ・ランチ』で提供されるほか、ファーマーズマーケットでも販売される。排出された生ゴミや落ち葉、家畜のフンは、年間約250トンものコンポスト(堆肥)に姿を変え、さらに循環していく。

ワインも食材も料理も、すべてがフル・サークル・ファーミングの循環の一部。消費され、また土にかえる
ワインも食材も料理も、すべてがフル・サークル・ファーミングの循環の一部。消費され、また土にかえる
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 ブドウの木々も化学肥料や農薬を使わない有機栽培で育て、カベルネ・ソーヴィニヨン、ピノ・ノワール、シャルドネなどが造られている。ジェフさんは、「自然がもたらす恵みを享受するからには、土地を大切にし、次の世代にも引き継いでいかなければ」という。

◇アカオノスリ、ルリツグミ…。自然の力で木を守る名門ワイナリー

 ナパとソノマを隔てるマヤカマス山脈の中腹に位置するスプリングマウンテンヴィンヤード。ワイナリーの畑は、スプリングマウンテンAVA(米国政府承認ブドウ栽培地)の約25%を占め、約845エーカーの土地の中に、135ものブドウ畑を所有している。

山の斜面にある畑は標高120~490メートルと高低差がある。右の写真中央が最上級キュヴェ「スプリング マウンテン ヴィンヤード エリベット 2005」。複雑なアロマの中に透明感あふれるミネラルとなめらかなタンニンが溶け込む
山の斜面にある畑は標高120~490メートルと高低差がある。右の写真中央が最上級キュヴェ「スプリング マウンテン ヴィンヤード エリベット 2005」。複雑なアロマの中に透明感あふれるミネラルとなめらかなタンニンが溶け込む
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 醸造されるワインはボルドー系のプレミアムワイン。味わいは繊細で優雅、クラシックな印象を漂わせる。だが、ブドウ栽培では、斬新で大胆な取り組みに挑戦してきたことで知られている。

 スプリングマウンテンヴィンヤードでは、除草剤や殺虫剤は一切使用しない。春の草刈りで活躍するのは羊たち。急斜面の収穫は手摘みで行う。害虫や害獣駆除のため、畑には大小1000個以上の鳥の巣箱が設置され、ルリツグミやフクロウ、タカ科のアカオノスリを呼び込んでいる。

 ユニークなアイデアの主は、カリフォルニア大学デービス校でブドウ栽培学を学んだヴィンヤードマネジャー(畑担当責任者)のロン・ローゼンブランドさんだ。同大バークレー校などと連携し、自然への悪影響が少ない畑の管理法を構築した。この手法は、環境意識の高まりとともに、ナパヴァレーをはじめ多くのワイナリーに広がり、採用されるようになった。米環境保護局は2010年、ロンさんの功績を表彰している。

害虫を捕食してくれるルリツグミの巣箱。ロンさん(右)らワイナリースタッフが一つひとつ設置した
害虫を捕食してくれるルリツグミの巣箱。ロンさん(右)らワイナリースタッフが一つひとつ設置した
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 ロンさんは、「ブドウの木々を健康に育てていくためには、根を食い荒らすモグラやネズミ、木を弱らせてしまう寄生虫対策が重要。ルリツグミのフンの解析を行ってみたところ、木々についている虫を大量に捕食していることが分かった。小さな取り組みのように思われるが、実は大きな効果がある。鳥類のほかにもヘビやシェルターから引き取ったネコの力も試している。自然に配慮していくには、動植物の力をうまく利用することが必要」と訴える。

◇ワインが宿る健全な環境。サステイナビリティ認証が高める価値

 環境と地域社会に考慮したワイン生産を目指し、ワインインスティテュートやブドウ生産者団体などは2003年、非営利団体『カリフォルニア・サステイナブル・ワイングローイング・アライアンス(CSWA)』を設立し、サステイナビリティへの取り組みを評価・改善していく認証制度をスタートさせた。

 評価項目は、持続可能なビジネス戦略をはじめ、水利用の最適化、エネルギー効率、近隣コミュニティーとの共存など、幅広く多岐にわたる。制定された農法実践規約「コード」には、栽培技術関連で140、醸造技術では104にも及ぶ規約が示されている。参加団体は規約と照らし合わせながら自己評価を断続的に実施し、改善を続けることで、継続的な向上を目指していく。

 2017年のサステイナブル認証報告書によると、1099のブドウ栽培団体、127のワイナリーが認証を受け、カリフォルニア州産ワインの74%が認証ワイナリーから産出されている。ワインには認証ロゴマークが貼られ、消費者は「環境への取り組み」もワイン選びのポイントにすることができる。

 ほかにも、ナパ・グリーンやフィッシュフレンドリーファーミングなど、さまざまな認証があり、地域独自の取り組みも行われているという。

「消費者にもサステイナビリティの意識が広がっている」と説明するリサさん(右)
「消費者にもサステイナビリティの意識が広がっている」と説明するリサさん(右)
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 CSWAのリサ・フランチオーニさんは、「ブドウ栽培や醸造方法、ワインに対する考え方はさまざまで、その多様性こそがカリフォルニアワインの魅力。しかし、地域社会との共生や環境への配慮、土地を未来に継承していくという視点は共通するものとして必要になっている。認証制度を通して個性豊かな各団体をつなぎ、カリフォルニアワインの価値を高めていきたい」と話している。

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【カリフォルニアワイン バイ ザ グラス プロモーション 開催中】

 カリフォルニアワイン協会が主催する「カリフォルニアワイン バイ ザ グラス プロモーション2019」が5月31日(金)まで、全国各地のレストランで開催されている。プロモーションは毎年実施されており、今年で25回目を迎えた。

 米国はイタリアやフランス、スペインに続いて世界第4位のワイン生産量を誇り、国内の約9割がカリフォルニア州から産出されている。バイザグラスではワインを1杯から注文でき、米国では気軽にワインを楽しめるスタイルとして定着している。

 プロモーション中、飲食店では料理に合わせたカリフォルニアワインを5種類以上用意。珍しいワインを選べるほか、ボトルでは高価で手が届かないプレミアムワインを気軽に堪能することができる。

 参加飲食店などの詳細は、特設ウェブサイトへ。

(提供 カリフォルニアワイン協会)

※この連載は今回で終わりです。

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