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【編集者のおすすめ】『カモフラージュ』松井玲奈著

『カモフラージュ』松井玲奈著
『カモフラージュ』松井玲奈著

■きっと気に入る一編がある

 「女の子の足の踵(かかと)に絆創膏(ばんそうこう)が貼られていたら、どう思いますか?」

 著者にお会いして間もない頃、打ち合わせの席で突然の問いかけ。その場にいた私を含む担当者たちは、一瞬固まりました。「その格好でデートに来られたら僕は萎える」「私は気にならない」「仕方がないのでは」--次第に白熱していく議論。面白い着眼点だと思いました。

 打ち合わせのあとに送られてきた一編「拭っても、拭っても」は、主人公のゆりが、街を歩く小柄でかわいいふわふわ系女子を見つめるシーンから始まります。見た目はほぼ完璧な女子の踵に貼られた絆創膏。ゆりはそれが無性に気になります。不快で、色っぽくない、と。そしてよみがえる当時の記憶。潔癖な彼氏との思い出、絆創膏を貼った指で作った“ある料理”のこと……。人間関係の奥底にあるじめっとした部分を描きつつ不思議と読後感は爽やかな作品です。

 著者のアイデアには驚かされてばかりでした。人が人を吐き出す物語(「ジャム」)を描きたいといえば、今度は闇鍋を題材にしたい(「リアルタイム・インテンション」)という。自由な発想から出発した物語は、途中で考えもしなかった方向へとかじを取り、読者はいい意味で予想を裏切られます。デビュー作とは思えないほど、一編ごとの作風も違えば、印象も違う短編集。著者の顔が見えない--あらゆる面で“擬態”した--小説になっています。

 性別・年齢を問わず、きっと気に入る一編があるはずです。ぜひご一読ください。(集英社・1400円+税)(集英社文芸編集部 N)

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