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カリフォルニアワインが放つ多彩な魅力  ~バイザグラスで広がる楽しみ(3)~

 カリフォルニアワインが進化を続けている。変化に富んだ地形や土壌、複雑な気象条件に加え、ワイン造りの伝統を継承しながら、醸造学などの学術研究や最先端技術、高い環境意識、食の流行を柔軟に取り込んでいる。

 「お気に入りが必ず見つかる」といわれるカリフォルニアワイン。レストランなどでも、さまざまなワインを気軽に楽しめるスタイルとして、1杯から注文できるバイザグラスが定着している。個性豊かな造り手たちが生み出す魅力を4回にわたって紹介する。

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〈1杯の物語〉 伝統から新潮流へ。造り手たちの足跡、未来とは

 手間と時間をかけて生み出されるワイン。土やブドウ品種、歴史、消費のトレンドなど、ワインの数だけ、造り手たちのこだわりがある。グラスを傾けたとき、芳醇なアロマとともに、人々の物語が香り立つ。これもまた、ワインの魅力の一つといえるだろう。

◇常識を疑い、ゼロへ回帰 ローヌ・レンジャーが描く次のワインとは

 サンフランシスコの南にあるサンタクルーズ・マウンテンを本拠地にするワイナリー、ボニー・ドゥーン・ヴィンヤード。創業者でワインメーカーでもあるランドル・グラムさんは、時代を先取りする行動力と奇想天外なアイデアで、ユニークなブランドを次々とリリースしてきた。

 プレミアムワインにスクリューキャップを導入し、記載義務のない添加物もラベル表記して品質の透明性を高めた。最盛期には年間約40万ケースを生産する巨大ワイナリーとなり、ビジネスは大成功を収めたが、自身の健康や家族との時間を見つめる中で、小規模生産へ原点回帰をみせた。斬新なラベルアートや自然農法、北向き畑の購入…。前例にとらわれない試みで、話題を提供してきた。

 ランダルさんの歩みは、イノベーション(革新)の歴史といっても過言ではない。そして今年1月、30年以上手がけてきた看板ワイン「ル・シガール・ヴォラン」について、2017年を最後に生産終了することを表明し、ワイン関係者ら再び驚かせている。

ワインに囲まれるランダルさん。「テロワール(土地)をコントロールするのではなく、個性を信じること」と力を込める
ワインに囲まれるランダルさん。「テロワール(土地)をコントロールするのではなく、個性を信じること」と力を込める
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 ランダルさんは、天才醸造家の名声をほしいままにしてきた。しかし、「器用ではないし、ブレンドが得意なだけ。音楽を合成するシンセサイザーのように、さまざまな要素を組み合わせるアーティストのようなもの」と自身を表現する。

 こだわりの中心にあったのは、南仏ローヌ。ランダルさんはシラーなどローヌ系品種を中心としたワイン生産を牽引し、ローヌ・レンジャーとも呼ばれた。その象徴が、「ル・シガール・ヴォラン」だった。シラーとグルナッシュ、ムールヴェードルをブレンドしたカリフォルニア発ローヌ系ワインだ。葉巻型空飛ぶ円盤のエチケット(ラベル)で知られ、1984年に生産を開始した。ユニークなラベルは、仏を代表するワイン原産地、シャトーヌフ・デュ・パプの村長が1950年代前半、UFO立ち入り禁止条例を制定したという出来事にちなんでいる。強烈なボトルデザインとは対照的に、カリフォルニアワインならではの豊かな果実味をいかしながら、南仏らしいスパイスや渋みを融合させた繊細な味わいを誇る。

「ル・シガール・ヴォラン」のラベル(左、同社提供)。葉巻型空飛ぶ円盤がもたらす赤ワインの恵み。スクリューキャップには宇宙人の姿も…
「ル・シガール・ヴォラン」のラベル(左、同社提供)。葉巻型空飛ぶ円盤がもたらす赤ワインの恵み。スクリューキャップには宇宙人の姿も…
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ダヴェンポートにある小さなテイスティングルーム(左)。カラフルな店内にはワイン愛好者らが集う
ダヴェンポートにある小さなテイスティングルーム(左)。カラフルな店内にはワイン愛好者らが集う
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 「素晴らしいワインが出来ても、『もっと何か出来ないか、良くならないか』と考えてしまう。パワフルだったり、控えめだったり、つかみ所がなかったり…とテロワールの多様な個性を発見することが大切。時間をかけてやってきたことをリセットして、積み重ねてきた常識を疑い、また最初からアイデアを練っていこうと思う」と次を見据える。

 残念ながら現在、ボニー・ドゥーンのワインは日本に輸入されていない。しかし、カリフォルニアワインの奇才が、次にどのようなシリーズを誕生させるのか。楽しみと期待が膨らんでいく。

◇温故知新をゆく新潮流 〈ニュー・カリフォルニア〉

 アレックス・クラウゼさんとジョン・ロックさんが2008年、サンタクルーズに構えたビリキーノ・ワインズ。香りと調和、気まぐれさを兼ね備えたワイン醸造を目指している。テロワールを表現したエレガントなワインを追い求めるカリフォルニアの新潮流、ニュー・カリフォルニアの一翼として注目を集めている。

「ワインは誰かの人生をちょっと良くすることができる。幸せをシェアする代名詞のようなもの」と話すアレックスさん(左)とジョンさん
「ワインは誰かの人生をちょっと良くすることができる。幸せをシェアする代名詞のようなもの」と話すアレックスさん(左)とジョンさん
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 「ニュー・カリフォルニアという言葉は、確かに自分たちのやっていることを言い当てているのかもしれない。でも、新旧を意識したことはないし、言葉が一人歩きしている印象もある。風土を表現するというワイン造りの原点を大切に、さまざまな醸造方法やブレンドを試みているだけ」とアレックスさんは話す。

 仏などワイン生産の歴史が長い国々をオールドワールド(旧世界)と呼ぶのに対し、米国などのワイン生産新興国はニューワールド(新世界)といわれる。カリフォルニアワインをみても、どっしりと重厚といった固定的な印象があるが、実は軽やかなタイプのワインは以前から存在する。国や地域、傾向や流行などは独立した点のように捉えられがちだが、ジョンさんは「つながっているし、それぞれの境界線はあいまいなのでは」と指摘する。

ユーモアを大切に。壁にはワイナリー名が隠れている。「ビール(ビリ)+E(イー)+鍵(キー)+NO(ノー)」(左)。右の絵は、マルヴァジアの原産地といわれるイタリア・カラブリア州の森林がモチーフでラベルにも使われている
ユーモアを大切に。壁にはワイナリー名が隠れている。「ビール(ビリ)+E(イー)+鍵(キー)+NO(ノー)」(左)。右の絵は、マルヴァジアの原産地といわれるイタリア・カラブリア州の森林がモチーフでラベルにも使われている
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 2人は仏の自然派ワイン生産者として知られるドメーヌ・オステルタグをはじめ、イタリアのワイナリーで経験を積み、さらにボニー・ドゥーンのランダルさんの下でもワイン造りを学んだ。自生酵母を使用し、農薬は出来る限り使わない。古木のブドウの複雑性を最大限にいかす。発酵途中で瓶詰めし、瓶内再発酵により澱とともに微炭酸が残る製法のペティアン・ナチュレルなど、さまざまな醸造方法を試みる。

 「今までなかった〝ふわんとした雰囲気〟のワインを造っていきたい。存在感はあるけれど、一歩ひいて食事を引き立ててくれるような」

 蓄積してきた知識・経験のライブラリーとひらめきを組み合わせる柔軟さ。それこそが〈新しい〉と表現される理由なのだろう。カリフォルニアでは珍しいブドウ品種、マルヴァジア・ビアンカ100%の「マルヴァジア・ビアンカ」をはじめ、樹齢100年を超えるグルナッシュやサンソー、ロールなどをブレンドした「ヴァン・グリ」など、香り高く透明感あふれるワインが、米国のみならず世界各地で人気を集めている。

◇厳しく、素晴らしいテロワール 次世代につなぐ

 ソノマ・コーストでも最も冷涼な西ソノマに位置するハーシュ・ヴィンヤーズ。創業者であるデイヴィッド・ハーシュ氏の愛娘、ジャスミンさんは2008年からワイン製造や販売活動などに幅広く携わっている。大学の専攻はアジア研究で、京都大学への留学経験がある。ワインは、近いようで遠い存在だったという。

 デイヴィッド氏は1978年、ブドウ栽培には適さないと考えられていた土地を購入し、2年後にピノ・ノワールとリースリングを植えた。10年が過ぎたころ、素晴らしいブドウが収穫できるようになった。畑は今や米国のグラン・クリュ(特級畑)と称される。有名ワイナリーにブドウを供給していたが、2002年からは自社ワインの生産に乗り出している。

 畑は、北アメリカプレートと太平洋プレートが交わる巨大なサンアンドレアス断層に隣接している。72エーカーの土地は地勢も土壌も複雑に変化する。標高も高く、天気の移り変わりはめまぐるしい。61もの区画に分け、それぞれ異なる栽培方法を採用している。きめ細かい管理が求められ、地震といった災害リスクを抱える厳しい土地でもある。

 「幼いころから父の姿を見てきて、ブドウ栽培やワイン製造の難しさをよく知っている。自分には到底できないと思っていたのに、なぜ戻ってきたのか。その理由は今でも分からないが、生まれ育った故郷でもあり、唯一の選択肢だったと思う」。広大な畑を見つめながら、ジャスミンさんは振り返った。

眼下に広がる畑。その下に霧が立ちこめる(左)。ほぼ同じ時間帯、別の区画の畑は霧に包まれていた。複雑で独特のテロワールが極上のブドウを育てあげる
眼下に広がる畑。その下に霧が立ちこめる(左)。ほぼ同じ時間帯、別の区画の畑は霧に包まれていた。複雑で独特のテロワールが極上のブドウを育てあげる
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 ジャスミンさんが重視するのは、バランス(調和)だ。2011年~16年にはピノ・ノワールとシャルドネ生産者による非営利団体『IPOB』(In Pursuit of Balance、バランスの追求)を設立運営した。果実の酸味を大切にし、軽くて食事と一緒に楽しめるワインの魅力を伝えてきた。

「食やワインの好みも人それぞれだし、変わっていく。多様でいい」と笑うジャスミンさん
「食やワインの好みも人それぞれだし、変わっていく。多様でいい」と笑うジャスミンさん
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 ハーシュを代表する最高峰ワイン「リザーブ・エステート・ピノ・ノワール」(写真上右)は、古くて優れた畑のブドウのみから造られるため、生産量は少ない。特に2015年は、天候などの影響で畑全体の収穫量が激減し、例年の25%ほどしかなかったという。ジャスミンさんの理想に近いエレガントな香りと酸、タンニンと果実感のバランスは見事に実現している。しかし、それ以上に重要な意味を持つビンテージになったという。

 「収入などを考えると不安しかなかった。収穫を手伝ってくれる方々を雇う余裕もなく、作業は家族と限られたクルーで行った。収穫の夜、満月が浮かんでいた。静かな時間が流れる中で、ハーシュのこれからについて語り合いながら作業を行った。ブドウを植えて最初の10年、一人で挑戦を続けた父を尊敬する。ワイン造りには、いい年も悪い時期もある。だからこそ、ワインは家族やワイナリーに関わる人たちの歴史、物語でもある。この素晴らしい土地を次世代につないでいくことを考えていきたい」

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【カリフォルニアワイン バイ ザ グラス プロモーション 開催中】

 カリフォルニアワイン協会が主催する「カリフォルニアワイン バイ ザ グラス プロモーション2019」が5月31日(金)まで、全国各地のレストランで開催されている。プロモーションは毎年実施されており、今年で25回目を迎えた。

 米国はイタリアやフランス、スペインに続いて世界第4位のワイン生産量を誇り、国内の約9割がカリフォルニア州から産出されている。バイザグラスではワインを1杯から注文でき、米国では気軽にワインを楽しめるスタイルとして定着している。

 プロモーション中、飲食店では料理に合わせたカリフォルニアワインを5種類以上用意。珍しいワインを選べるほか、ボトルでは高価で手が届かないプレミアムワインを気軽に堪能することができる。

 参加飲食店などの詳細は、特設ウェブサイトへ。

(提供 カリフォルニアワイン協会)

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