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【理研が語る】ピンチの中に勝機あり 佐野健太郎

理研の佐野健太郎氏
理研の佐野健太郎氏
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 パソコンは年々速くなる。そのような経験をお持ちの方は、少なくはないだろう。私が学生だった昔は、毎年、より安価で、より高い処理性能の新しいパソコンが発売されたものだ。機種を更新するだけで、同じソフトウエアが速く動作するようになる。貧弱なグラフィックスから始まって現実に近い立体画像を駆使したゲームが登場したのも、この頃だ。パソコン少年だった私にとって、ワクワクする夢のような時代であった。

 パソコンをはじめとするコンピューターは、半導体で作られたプロセッサ(処理装置)チップを搭載している。1980~90年代には、プロセッサの仕組みそのものの改良に加え、半導体チップの上に作り込む回路を小さくする微細化により、より低電力ながら高速に動作するコンピューターを次々と実現できた。しかしながら、そのような黄金期は長くは続かなかった。

 2000年代には、微細化をしても電力を下げ辛くなった。そのため、電力を食う高速動作をあきらめて、低速のまま数を増やして性能を伸ばす「メニーコア方式」が主流となった。それ以降現在まで、微細化により半導体チップ上により多くのプロセッサコアを搭載することで、何とかコンピューターの性能を上げ続けることができた。最新のスーパーコンピューターも、同じ方式で作られている。

 しかし、現在、さらに大きな壁が私たちの前に立ちはだかろうとしている。これまでコンピューターの高性能化を支えてきた半導体の微細化がいよいよ限界に近付いているといわれており、これまでと同じ方式のままでは、性能向上が難しくなるどころか止まってしまいかねない。最近はパソコンの性能が昔ほど上がらないと感じる方も、多いのではないか。

 ピンチではあるが、それは逆に、新方式により世界を席巻できるチャンスでもある。勝機をつかむために、世界中の研究機関や企業がしのぎを削っている。この先コンピューターをさらに進化させるには、従来の枠にとらわれない自由な発想が必要だ。そのような中、私たちは、ソフトウエアを実行する代わりに計算回路を直接書き換えて高性能を実現する新しいコンピューターの実現に取り組んでいる。困難も多いが、それらを一つ一つ乗り越えていくのは喜びも大きい。パソコン「少年」ではなくなった私だが、今度は、昔と同じくワクワクする時代を自ら切り開くべく、日々奮闘している。

 佐野健太郎(さの・けんたろう) 理研計算科学研究センター(R-CCS)プロセッサ研究チーム・チームリーダー。東北大学で博士(情報科学)の学位を取得後、同大学に勤務。平成30年4月から現職。回路を自由に書き換えて計算を行う新しい原理のコンピューターの実現を目指し、日々研究に勤しむ。

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