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【ビブリオエッセー】美しいリズムと良き日本の風物 島崎藤村「藤村詩集」(新潮文庫)

 中学の時だったのか、高校の時だったのか。はたまた国語の時間だったのか、音楽の時間だったのか。今では記憶の霧の中だが「椰子の実」とか「千曲川旅情の歌」を学んだ記憶があった。

 そして三十歳ぐらいの時だった。書店で藤村の詩集を見つけた時は、おのずと手を伸ばしていた。

 「まだあげ初(そ)めし前髪の/林檎(りんご)のもとに見えしとき」

 七五調の美しいリズム、どの詩も平易な言葉で多くのことが表現されている。そのうえ良き日本の風物が詩集全体に散りばめられていた。とりわけ七五調は日本人のDNAとして受け継がれている感じがしてならなかった。

 もちろん散文は黙読していたが、この詩集は声を出して陶酔したように読んだ。三日で全部読んだ。藤村の詩集を読んだことが私を詩の世界へと導き入れたのだ。何冊も買った藤村詩集。今回読み返したのは表題のものだ。それからは「現代日本名詩集大成」を購入したり、他の個人詩集を買っては読み耽った。

 そして拙いながらも自分で詩を書き始めた。ある時、子供が通っていた小学校に校歌がなかったので募集が行われた。応募すると、五十点ほどの中で私の詩が採用されたのだった。

 やがて短歌も作り始めて、新聞に投稿していた。さらに六十五歳になって、漢詩の世界ものぞくことになってしまった。いまはそれら三つを並行して、文字通り詩作三昧の日々を送っている。たどってみればすべては島崎藤村から始まったのだった。

(大阪府八尾市 川西守81)

 【ビブリオ・エッセー募集要項】本に関するエッセーを募集しています。応募作品のなかから、産経新聞スタッフが選定し、月~土曜日の夕刊1面に掲載しています。どうか「あなたの一冊」を教えてください。

 投稿はペンネーム可。600字程度で住所、氏名、年齢と電話番号を明記し、〒556-8661産経新聞「ビブリオエッセー」事務局まで。メールはbiblio@sankei.co.jp。題材となる本は流通している書籍に限り、絵本、漫画も含みます。採用の方のみ連絡、原稿は返却しません。二重投稿はお断りします。

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