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【フード 食・名店】和食料理店「八雲茶寮」 ひと椀に春の滋味とりどり

端正に並べられた昼懐石の「四つ椀」。汁椀(右下)のタケノコの上に神馬藻が添えられている
端正に並べられた昼懐石の「四つ椀」。汁椀(右下)のタケノコの上に神馬藻が添えられている
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 新しい元号が古典をひもとき決まるように、料理でも、故(ふる)きを温(たず)ねて新しいものが生まれることがある。間もなく令和(れいわ)の幕が開くのを前に、和の伝統を大切にしながらも、モダンに仕立てた料理を供する和食料理店「八雲茶寮(やくもさりょう)」を訪ねた。(津川綾子)

額縁のような窓

 季節は春。駅から店へと続く道は、桜が舞っていた。10分ほど歩くと、閑静な住宅街の一角に古い日本家屋の面影を残した「八雲茶寮」の門構えが現れる。飛び石を踏み店に入ると、一層の静寂が迎えてくれた。

 壁はしっくい塗りで天井は高く、照明は控えめ。BGMは流れず、装飾も最小限だ。ただ、大きな窓が外の日本庭園の緑や花々を、額縁のように切り取る。

 平成21年に開店した八雲茶寮を運営するのは、「シンプリシティ」(東京都目黒区)。代表の緒方慎一郎氏は、博物館「インターメディアテク」(千代田区)の空間デザインを始め、紙の食器「WASARA(わさら)」を手掛けるなど、食や工芸など幅広い分野で活動。いずれの場でも、現代的な感覚で日本の伝統的な美意識を形にしてきた。

先人の知恵から

 昼懐石は、「四つ椀(わん)」を中心に、先付けや季節物、お造り、茶漬けなどが供される。

 取材の日、目を引いたのは、京都のタケノコに、石川・能登半島沿岸でとれた「神馬藻(じんばそう)」の新芽などが添えられた「出合いもの」の汁椀(しるわん)。

 神馬藻はホンダワラ属の海藻で、別の古語で「なのりそ」(莫告藻などと書く)とも呼ばれた。

 〈住吉の 敷津の浦の なのりその 名は告(の)りてしを 逢はなくも怪(あや)し〉 -万葉集巻十二

 なのりそ、つまり神馬藻は「名乗る」を想起する序詞として、古い和歌などで使われていたほか、古事記や日本書紀などの記述から、奈良時代から食べられていたと推定される。

 「神馬藻の春の新芽はとてもおいしい。日本人ととても深い縁のある海藻のおいしさをあらためて味わっていただきたい」と総料理長の梅原陣之輔さん。

 日本に古くから伝わる自然の恵みを食材に用いる八雲茶寮では、「産地の気候風土などを風土記の記述や民俗学の記録などをひもとき、先人の知恵から学んだ上で扱うことがある」ともいう。

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