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【彰往考来 新時代のヒストリア】幕末維新から平成、そして未来へ-近現代史と皇室を考える 所功・京都産業大名誉教授(7)

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御代替わりにあたり皇室への思いを語る所功さん=千葉県柏市(関厚夫撮影)
御代替わりにあたり皇室への思いを語る所功さん=千葉県柏市(関厚夫撮影)

小泉信三の教え

 以前、乃木希典(のぎ・まれすけ)の薫陶が昭和天皇に大きな影響を与えた話をしました。同じことをまもなく譲位される今上陛下について考えますと、穂積重遠先生(※1)をはじめとしてその「帝王教育」に献身された先生を幾人も挙げることができます。その代表が昭和24(1949)年に東宮(皇太子)御教育常時参与に就任した小泉信三先生(※2)です。小泉先生の教育内容については「御進講覚書」や「メモ」などが先年、公開されました。これらを読んだとき、いくつもの新鮮な驚きがありました。

 まず小泉先生は、世界史を見渡すと、敗戦国では民心が王室から離れるか、怨嗟(えんさ)の対象となって君主制は終焉するのが通則である-などとしたうえで「ひとり日本は例外をなし、悲(かなし)むべき敗戦にも拘(かかわ)らず、民心は皇室をはなれぬのみか、或(ある)意味に於ては皇室と人民とは却(かえっ)て相近づき相親しむに至ったといふことは、これは殿下に於て特と御考へにならねばならぬことであると存じます」と問題提起しています。

 小泉先生はその“解”として昭和天皇の「御君徳」を挙げます。昭和天皇は平和を愛好し、学問・芸術を尊重し、天皇としての義務に忠実であり、人に対する思いやりが深いということを国民は存じ上げていた--などと説明します。また、それが「敗戦といふ日本の最大不幸に際しての混乱動揺を最小限に止(とど)めさせた所以(ゆえん)であると存じます」とも指摘しています。

 そのうえで「この事を深くお考へになり、皇太子として、将来の君主としての責任を御反省になることは殿下の些(いささ)かも怠(おこた)る可(べか)らざる義務であることをよく御考へにならねばなりませぬ」「殿下の御勉強とは修養とは日本の明日の国運を左右するものと御承知ありたし」などと結んでいます。

 さらに「人の顔を見て話をきくこと、人の顔を見て物を言ふこと」という具体的な心得もあります。今上陛下が各地にお出ましになったさいには、必ず相手の顔を見ながらその悲しみや苦しみを理解しようと努められ、その気持ちを受け止めたうえで、相手の心にしみいるような言葉をかけられる。これは小泉先生の教えの影響であり、すでに昭和天皇がそのお手本でもありました。

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