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【彰往考来 新時代のヒストリア】幕末維新から平成、そして未来へ-近現代史と皇室を考える 所功・京都産業大名誉教授(5)

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時代への強い思いを語る所功さん=東京都千代田区の産経新聞東京本社(桐山弘太撮影)
時代への強い思いを語る所功さん=東京都千代田区の産経新聞東京本社(桐山弘太撮影)

 〈所さんは故郷(現・岐阜県揖斐川町)の公立小・中学校を経て、県下でも有数の進学校である県立大垣北高校に入学したが、高校卒業後は就職を考えていた。しかし、クラス担任から奨学金制度の活用を勧められたことをきっかけに方針を転換。「授業料の安い国立大で、しかも家から通える範囲なら」という母、かなをさんの意をうけて名古屋大学文学部を受験し、合格した。通学には往復で5時間あまりかかるなか、帰路には家庭教師などのアルバイトを続けた〉

『風流夢譚(ふうりゅうむたん)』の衝撃

 私が名古屋大に入学した昭和35(1960)年春は「60年安保闘争」(※)の真っ最中でした。民主青年同盟(民青)の指導する学生自治会が授業拒否のストを行い、大規模なデモにはノンポリの学生も動員されていました。また彼らは、反米・親ソを連日吹聴しましたので、「ひょっとしたら日本にも共産革命が起こるのではないか」という懸念がありました。

 このような騒然とした世情のなかでさらに衝撃を受けたのが、それまで良心的な総合雑誌だと思っていた「中央公論」の12月号(この年の11月10日発売)に『風流夢譚』が掲載されたことでした。

 〈『風流夢譚』は『楢山節考』の著者として知られる深沢七郎(1914~87)の短編小説。夢の中という設定ながら、「革命の様なこと」が起き、群衆が皇居を占拠。お祭り騒ぎのなか、当時の皇太子ご夫妻や天皇・皇后両陛下を処刑する--というセンセーショナルな内容だった。

 掲載後、宮内庁は法的措置を検討。批判(一部には「革命への恐怖を語った寓話(ぐうわ)的な文学作品」として擁護する声もあった)が高まるなか、中央公論社側は編集長が宮内庁に出向いて陳謝した。宮内庁もこれを受け入れたが、右翼団体は抗議行動を継続。そして翌36年2月、右翼少年が中央公論社社長方に侵入、家政婦を刺殺し、夫人に重傷を負わせるテロ事件が起きた。前後して深沢は世間から身を隠し、放浪生活に入った〉

 私は学内生協の書店で偶然これを見つけて立ち読みし、がくぜんとしました。

 たとえ夢物語とはいえ、現行の憲法に「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」と明記される天皇とご家族を斬殺して嘲笑するような小説が公表される、というのは異常です。もしこれを放置すれば、やがて本当に天皇制度が抹殺されるような事態になるのではないかという危機感に襲われました。

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