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「鬼子の歌 偏愛音楽的日本近現代史」 葛藤から生まれる豊かな思想

インタビューに応じる片山杜秀さん
インタビューに応じる片山杜秀さん
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 □音楽評論家・政治思想史研究者・片山杜秀さん

 日本人作曲家のたどった人生と作品によって日本近現代史に新たな光をあてる-。政治思想史研究と音楽評論で旺盛な執筆を続ける片山杜秀さん(55)が、544ページに及ぶ大著『鬼子の歌 偏愛音楽的日本近現代史』(講談社)を出版した。クラシック音楽愛好家に鬼子(おにご)扱いされ、聴かれる機会の少ない日本人作家の作品にアプローチするさまざまな道も提示する。(桑原聡)

                   ◇

 音楽評論の第一人者だった今は亡き吉田秀和さん(1913~2012年)の後継者と目される片山さんだが、幼いころにバイオリンを習わされ、クラシック音楽を敬遠するようになったという。ところが、小学生のころによく見た邦画が人生を変えた。映画音楽である。その多くはクラシック畑の作曲家が担当している。よく知られているのは「ゴジラ」の伊福部昭(いふくべ・あきら)(1914~2006年)だろう。映画音楽を起点にして、さかのぼるように作曲家が本来の土俵で書いた作品を聴くようになり、魅力に取りつかれていった。

 「近代文学や近代美術にひけをとらない蓄積があるにもかかわらず、日本人作曲家の作品を正面から論じても、誰も関心を持ってくれないのが実情です。だからさまざまなジャンルに筆を及ぼしながら、作品を論じてみようと考えました」

 本書では片山さんが偏愛する14人の作曲家の作品が取り上げられる。その範囲は山田耕筰(こうさく)(1886~1965年)から黛(まゆずみ)敏郎(1929~97年)と松村禎三(1929~2007年)まで。西洋文明との葛藤と大戦を経験した世代だ。片山さんは作曲家の個人史、家族史を丹念に追い、その中に創作のカギとなる何かを発見する。名作「交響三章」などで知られる三善晃(1933~2013年)なら「戦争で死んだ子供」、戦前から戦後にかけ国内外で名指揮者としてならし、その功績から「尾高(おたか)賞」が創設された尾高尚忠(ひさただ)(1911~51年)なら「調和と均衡」、松村なら「小さきものへのフェティシズム」…。そして何かによって創作された作品を論じながら、日本の近現代史を照射する。

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