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【本郷和人の日本史ナナメ読み】新元号をめぐって(上)漢籍以外で作ってみた「本郷試案」

 今回は安倍晋三首相の強い意向で、中国の本ではなく、日本の古典を典拠として文字を選ぶということになりそうだ、との話が漏れ伝わっていました。漢字自体が中国由来なのだから、根拠も中国の典籍で悪いことはないはずなのですが、日本の伝統を重んじたいという気持ちは納得できます。ぼくは二流の研究者なので政府から意見を尋ねられたりしませんが、テレビの人に頼まれて、試みに元号候補を作ってみました。

 平安時代前期の漢詩集に『文華秀麗集』というものがあります。空海や橘逸勢(たちばなのはやなり)とともに「日本三筆」のお一人に数えられる嵯峨天皇の命によって編まれたものですが、これを繙(ひもと)いてみます。すると中に嵯峨天皇の御製(ぎょせい)があります。「江頭の春暁」と題する七言律詩に「物候(ぶっこう)陽和いまだしというといえども、汀洲(ていしゅう)の春草萋萋(せいせい)たらんと欲す」(気候はまだのどかではないけれども、水際の春草は元気に茂ろうとしている)から、たとえば「のどか」を表現する「陽和」はいかがでしょう。

 あるいは同じく嵯峨天皇は、漢帝国を建設した劉邦に仕えた一世の大軍師、張良をたたえています。「史記講竟(こうきょう) 賦(ふ)して張子房を得たり」より、「命を受け漢祖に師となり、英風萬古(ばんこ)に伝う」(天命を受けて漢の高祖の師範となり、そのすぐれた姿は永遠に伝わる)。ここからたとえば「すぐれた姿は後々まで」で「英萬」はいかがですか。

 これはものの二、三十分で選んだものなので、全く練れていません。たとえば「陽和」は「昭和」と音がかぶるからダメだ、と言われてしまうでしょう。それから「英萬」は「萬」の字が「万」の旧字で、現在これを用いるのは適切ではない、となります。まあそれなら「英万」ならばいいのかな。でも中国の偉人を褒める詩が典拠となると、嵯峨天皇の作とはいえ、いい気持ちはしないという人は多いかも。

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