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【本郷和人の日本史ナナメ読み】新元号をめぐって(上)漢籍以外で作ってみた「本郷試案」

竹中重治(半兵衛)像=模本、東大史料編纂所蔵
竹中重治(半兵衛)像=模本、東大史料編纂所蔵

 新元号は「令和」に決まりましたね。ぼくはこのところ、新しい元号のことを各メディアからいろいろと聞かれていて、一発屋の「元号芸人」のようになっていました。なかなかない経験でしたので、一連のやりとりの中から、いくつかお話ししてみましょう。

 まず、新しい元号は国民みんなを「これはいいな!」と明るい気持ちにさせてくれるものでなくてはなりません。この認識は社会に浸透していて、アンケートをとってみると「平和」とか「希望」とか「新生」とかが上位に入ってきます。確かにそれらが、素晴らしい概念であることはまちがいありません。

 でも、もう一つ忘れてはならないのは、元号はのちのち現在の皇太子殿下のお名前になることです。このとき、たとえば300年の後、皇太子殿下を「平和天皇」、「希望天皇」、「新生天皇」とお呼びするのが適切か否か。正直なところ、違和感がありすぎるような気がしませんか。この点には留意すべきでしょう(高校生女子へのアンケートで上位だったという「嵐」「タピオカ」は、もちろん論外)。

 別の話をすると、明治より前、元号は「改元定(さだめ)」という貴族の会議で定められていました。現役の公卿(くぎょう)のうち「ものをよく知っている」と認められた7、8人くらい(人数に定めはない。慣習で)が出席者として集められます。彼らには、学問に練達な貴族(貴族の学問のうち、とくに史書や漢詩文を専攻する紀伝道に熟達した人。菅原氏などが多く選ばれるので、改元定への出席者より下位になる)が提案した元号候補とその典拠(たとえば『論語』の里仁(りじん)篇にこうある、など)が示されます。

 これをもとに、改元定への出席者は減点法で候補を削っていきます。重箱の隅のつつきあいのような議論、たとえば「『化』という字は『大化』以来ずっと使われていない。やめておこう」「『正』という字は分解すると一に止める、つまり第一にストップという意味になるので不吉」のような話し合いを重ねて、生き残ったものの中から「まあこれが無難だな」というものを天皇に奏上(そうじょう)して、勅定(ちょくじょう)を得る。そうすると詔(みことのり)が作成されて、ただちに新元号が用いられるようになるのです。

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