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【話の肖像画】智弁和歌山前監督・高嶋仁(72)(10)「青春」その上にある夢

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智弁和歌山の優勝記念碑。今後も優勝を期待し、下半分は空白にしてある =和歌山市(奥清博撮影)
智弁和歌山の優勝記念碑。今後も優勝を期待し、下半分は空白にしてある =和歌山市(奥清博撮影)

 〈智弁学園の藤田照清(てるきよ)前理事長には、奈良では3回、和歌山でも謹慎した際に辞表を提出したが、受理されなかった〉

 やはり長い目で見てくれていた。「こいつはなんとかせなあかん」と育ててくれた。信じて待ってくれていたんですね。その思いが和歌山に来て開花した。選抜で初めて優勝したとき、理事長はアルプスで泣いていたと聞きましたから。思いが実ったんでしょうね。甲子園で優勝したら記念碑を造ってもらうのですが、3回優勝したら3個あるはずなのに、智弁和歌山には1個しかない。裏にメンバーの名前をはめ込むように造られている。下は大幅に空けた状態で。だから「くそう、埋めたらええんやろ」と思ってしまう。(理事長に)見抜かれているんです。

 〈四国を巡礼した後には、高野山の町石道(ちょういしみち)約20キロを日課で歩くようになった〉

 八十八カ所のお礼参りのため、高野山を訪れた。さらに家から高野山に行くときにどこか歩く道があるはずだと探すと、町石道があった。1回歩いて、こんなにすばらしい道があるのかと思い、病みつきになった。週2回のペースで、過去、現在、未来と煩悩の数を3ラウンド。108回を3回。それが4年ほどで終わり、これくらいは誰でもできると思い、目標を10ラウンドに切り替えた。しかし、4ラウンド目を歩き始めたところでドクターストップ。それからは歩いていない。その時点で351回。目標の3分の1しか行けていない。

 町石道からはパワーをもらえる。そして早朝の真っ暗で何が出てくるか分からない中、イノシシやシカが出てくる。それがワクワクする。弘法大師・空海に頭の中を洗脳されている状況ですから。

 妻に「もし空海が出てきたら何をするの」と聞かれ、「野球の話をすんねん」と答えた。すると「1200年前には野球はなかった」と返されて、「せやなあ、空海は野球のこと知らんか。なるほどな」と納得した。すばらしい道だけど、最終的に浮かぶのは、「あいつ今日グラウンド行ってしごいてやろう」「腰が高いからノックで低くしてやろう」といったことばかり。どうしても(野球が)出てくる。

 〈高校野球への思いは尽きない〉

 野球は「人生の縮図」。野球を強くして甲子園に連れて行くことも大事だが、世の中に出て堂々と生きていける人間を育てていく、というのが一番の目的。毎年、正月三が日の2日にOB会があり、「俺はだいぶやられた」「ノックのとき、へどを吐いた」「会社でうちの課長がうるさいけど、監督よりは楽や」という話を聞くと、やっていてよかったと思う。みんな集まれば、高校時分に戻ってしまう。「青春」。それはそれでよいと思うけれど、その上で、世の中でリーダーとしてやっていける人間を育てる。それが夢ですよね。(聞き手 尾崎豪一)=次回は日銀元副総裁の藤原作弥さん

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