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【聞きたい。】塩谷歩波さん『銭湯図解』 番頭さんが描くリアルな魅力

『銭湯図解』
『銭湯図解』
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 パラパラとページをめくるだけで楽しくなる本だ。各地の銭湯内部の構造を精緻に、湯につかる人たちを温かなタッチで描いたイラストを本にまとめた。著者は28歳のイラストレーター兼銭湯の番頭。じわりと人気が見直されている銭湯文化の伝道者の一人だ。

 「銭湯は身近にあって料金も安い、『ケ(日常)の日のハレ(非日常)』。平日の疲れを取るちょっとしたご褒美であり、自分を取り戻す場所だと思います」

 紹介するのは東京都内を中心とした全国の24銭湯。銭湯ファンをうならせる絶妙なチョイスだが、銭湯の入り方の図解も添えるなど初心者にも優しい。「銭湯界のエデン(理想郷)」など独特の紹介文も面白い。

 湯船でくつろぐ人、サウナと水風呂を交互に繰り返す人、なぜか湯船の隅で立っている人…。イラストにはリアルな銭湯が再現されている。カギは取材と描写の綿密さ。3メートルのコンベックス(巻尺)を駆使して銭湯の構造を測り、タイルの目地まで細かく描く。

 「ペン入れから着色まで全て手作業。1枚描くのに20時間以上かかり大変ですが、楽しいですね」

 以前は銭湯に関心はなかったという。大学院で建築を学び、平成27年に設計事務所に就職。だが、仕事で自分を追い込みすぎ、寝食をおろそかにしたことで心身の負荷が限界を超え、休職を経験した。罪悪感にさいなまれていたころ、友人から銭湯に行こうと誘われた。

 「光が差し込む明るい浴室、知らないおばちゃんとの何げないお話。『自分は何を悩んでいたんだ』と思ったし、居場所を感じられたのがうれしかったです」

 その後は各地の銭湯に通い、ツイッターに投稿した銭湯のイラストが話題を集めた。銭湯好きが高じ、現在は東京・高円寺の「小杉湯」の番頭も務める。

 「銭湯が斜陽産業だといわれるのがものすごく悔しい。銭湯の良さを広めること、銭湯ファンを増やすことが目標です」。下町の銭湯さながらの熱いハートを持っている。(中央公論新社・1500円+税)

 本間英士

【プロフィル】塩谷歩波

 えんや・ほなみ 平成2年、東京都生まれ。早大院修了。今作が初著書。

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