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【書評】『もしすべてのことに意味があるなら』鈴木美穂著

『もしすべてのことに意味があるなら』
『もしすべてのことに意味があるなら』

 □『もしすべてのことに意味があるなら がんがわたしに教えてくれたこと』

 ■自分を取り戻す人間ドラマ

 一読し、圧倒された。本書は単なるがん闘病記ではない。人生の崖っぷちに立たされながらも、自分を取り戻していく、その過程を赤裸々につづった一級のヒューマン・ヒストリーだ。

 元日本テレビ報道記者でキャスターも務めた著者(35)は、仕事にも慣れ、さあこれからという入社3年目の平成20年5月、24歳の若さで乳がん(ステージ3)を告知され、右乳房を全切除した。

 主に15~39歳までの思春期・若年成人を指す「AYA(アヤ)世代」の患者は、進学、就職、結婚、出産など人生の節目と治療時期が重なり、悩みや不安を抱えることが多い。

 著者も例外ではなかった。悲しみのどん底に突き落とされ、「なんで自分だけが」と泣き崩れた。幻覚や妄想などを引き起こす「せん妄」状態に陥り、「うつ状態」にもなった。「もう死にたい」と自宅マンションから飛び降りようとしたこともある。

 だが、「元気になったら、より人の役に立てる人生を送るんだ。この経験をしたからこそ、できることがある」と自らを鼓舞し、踏ん張った。21年に若年性がん患者団体「STAND UP!!」を立ち上げ、28年には東京・豊洲にがん患者らの無料相談施設「マギーズ東京」をオープンさせた。その行動力には目を見張るものがある。

 実は評者は小腸がん(ステージ4)を患っている。本書には随所に人生訓がちりばめられており、読み進めていくうちに、生きる勇気が湧いてくる。そのうちの一つ「どんな経験だって、価値に変えていくことができる」は、必死で生き抜いてきたからこそ言える言葉だろう。右胸の傷を「生き抜いてきた証」と表現するあたりは、力強さすら感じる。

 昨年9月に結婚式を挙げ、同12月に日テレを退社した。夢だった世界一周旅行を5月から夫婦で始める。今後の社会貢献に向け、ヒントを得るために約1年かけて視察してくるのだという。人生に悩んでいる人は、「生きているって、本当に面白い」と決して歩みを止めようとしない彼女の生きように触れてほしい。(ダイヤモンド社・1300円+税)

 評・坂井広志(政治部)

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