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【自作再訪】田名網敬一さん「BLOW UP」 都市と肉体が先行した60年代

田名網敬一さん(三尾郁恵撮影)
田名網敬一さん(三尾郁恵撮影)
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 ■すべてが荒削りで未完 圧倒的パワーがあった

 夢と現(うつつ)が交差する極彩色の幻想世界。サイケデリックな表現で世界的に知られるアーティスト、田名網敬一さん(82)にとって、社会の大きなうねりの中で駆け抜けた1960年代は今も、記憶のかなたで特別な光を放っているという。当時のグラフィックワークを集めた作品集「BLOW UP(ブロー・アップ)」には、若く荒削りなパワーが充満している。(聞き手 黒沢綾子)

                  

 僕の作品はよくサイケデリックと形容されるけれど、ちょっと誤解がある。

 60年代米国の若者を中心に広がったヒッピー文化の中から、LSDなど薬物による幻覚や心的体験をふまえた音楽やデザインが生まれるのですが、中でも色鮮やかな曲線が渦巻くような「サイケデリック・ポスター」には、幻覚を増幅させる意図があったそうです。

 僕の絵やポスターは、原色を多用するとはいえ、こうしたヒッピー文化と直接関係はない。ただ、サイケデリックには「心の中に入り込む」という意味がある。僕の作品は、自分の内面世界をあからさまに表したもの。その意味ではサイケデリックという表現も当たっている。表層ではなく心の中の風景をビジュアル化しているのです。

 《60年代のグラフィックワークは、平和を希求するポスターなど、ベトナム反戦運動や安保闘争など世相と連動する作品も多い。ただし雑多な図像を組み合わせ、独特のフォルムと色彩でポップに表現される“田名網ワールド”は既に出現しており、少年時代に夢中になった米国のB級映画やアニメーション、バットマンなどコミックのイメージも見え隠れする。これら60年代の作品を2000年に東京のギャラリーで展示したところ、予期せぬことが起きた》

 若い人が連日たくさん見に来たんですよ。手作業による版ずれやインクのむらもある当時のシルクスクリーン印刷が新鮮なのかも。現在の高精度の印刷にはない、温かい味わいとかね。

 この時代の面白さは、すべてが荒削りで未完であるところ。美術も映画も演劇も未熟だったけど、圧倒的パワーはあった。互いに未熟だからこそ、分野を横断した交流も盛んだった。

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