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「ねむり」「図書館奇譚」の挿絵担当、独のメンシックさん

『ねむり』(村上春樹著、カット・メンシック絵、新潮社)より
『ねむり』(村上春樹著、カット・メンシック絵、新潮社)より

 ■際立つハルキワールド

 人気作家、村上春樹さんの短編小説は、不思議な物語世界をもり立てる挿絵入りの「イラストブック」としても刊行されている。新潮社から出ている『ねむり』など4冊の挿絵を手がけたのが旧東ドイツ生まれのカット・メンシックさん(50)だ。ドイツから初来日したイラストレーターに“村上ワールド”の魅力を聞いた。

 「村上作品はとても好きだったから、(依頼してきたデュモン社と)電話をしながらひざまずいて叫んでしまった。『もちろん、やります』と答えましたね」

 『ねむり』『パン屋を襲う』『図書館奇譚(きたん)』『バースデイ・ガール』のイラストブックを手掛けたメンシックさんは打診されたときの感動が忘れられない。

 東西冷戦の終結をはさみ、ベルリンやパリの美大などで絵を学んだ。村上作品と出合ったのは1990年代後半。長編『羊をめぐる冒険』のドイツ語版だった。

 「村上さんの小説には西洋的な要素もあるから理解しやすい。一方で慣れないような不思議な感じもあって、どこかつかみ難い。といっても不愉快だというわけではなくて、“心地良い慣れなさ”なんです。それが恐らくドイツ人が考えるアジア的、東洋的な部分なのだと思う」

 もうひとつの魅力は語り方にあるという。「村上作品には大きな『通り』のようなものがあって、その横に路地がいくつもある。ストーリーは時折その狭い路地に入っていく」とメンシックさん。「いろんな現実の層が重なって、回り道をしながらストーリーが進んでいく。異次元の精神的世界と現実世界が同時に、同じような重量で存在している。それぞれの世界の重要性は一緒なんですね。そこに村上さんのマジックがある」

 重層的な物語に寄り添うために、作品に出ない人やモノを組み込んだ超現実的なコラージュを描き、色にも工夫を凝らす。一睡もできなくなった女性の姿を描く『ねむり』では、紺とシルバーを基調にしたイラストを添えた。

 「『ねむり』を読んで考えたのは、この本の雰囲気を最もよく表す色は何だろう?-ということ。浮かんできたのが夜をイメージする紺と、シルバーの月でした。ただ紺というのは闇ではあっても黒とは違う。『夜に人生を堪能し、新しい発見をする』というポジティブで冒険的な意味合いが紺には込められている」

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