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【ミュージアム】長野・安曇野 碌山美術館 夭折の鬼才 愛と悲しみ

荻原碌山が横恋慕していた人妻がモデルとされる「女」。碌山の葛藤なり懊悩なりが具現化された作品だと評されている(いずれも碌山美術館提供)
荻原碌山が横恋慕していた人妻がモデルとされる「女」。碌山の葛藤なり懊悩なりが具現化された作品だと評されている(いずれも碌山美術館提供)
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 駆使する技法で底意に秘めた思念をある形にする作業が、芸術家の生業であろう。形になるまでは果てもない葛藤なり、懊悩(おうのう)なりがあり、この醍醐味(だいごみ)を感得できたら、来訪した意義はこの上ない。荻原碌山(守衛)が明治43年に制作し、同年の文展(文部省美術展覧会)に出展された「女」には、それがある。

 ひざまずいた女性が後ろ手に腕を組み、虚空を見上げている。言うに尽くせぬ人生の悲哀から救いを求めているのか、見つめる先に望みがあるのか、それとももう観念したのか…。そもそも碌山はなぜ、これほど謎めいた作品を制作したのか。

 武井敏学芸員によれば、碌山は、郷土・安曇野の大恩ある先輩の妻に横恋慕していた思いを抑え、夫の浮気の相談に乗ったりしていたという。愛する病弱な息子を看病しつつ、気丈に振る舞う強さの裏側に潜む深い悲しみも感じ取った。

 「女」は、この妻の心象風景を自らの思念に落とし込み、それを具現化したものである。武井学芸員は「後ろ手に組んだ姿勢は『絶望』であり、顔が上に向いているのは『変化』の表れ」なのだと説明する。

 「女」に限らず碌山は、この妻をモチーフにした作品を手がけている。碌山は、かなわぬ恋に苦しみ、どうかすると暴発しそうな気持ちを戒めていたに違いない。人妻に恋をし、誤ってその女性を殺害してしまった真言宗の僧を作品名にした「文覚」、夫の浮気を嘆き、絶望に沈む「デスペア」などがある。

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