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心の奥に眠る不条理紡ぐ 震災8年 福島の詩人、和合亮一さん詩集「QQQ」

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「自分の奥の奥まで入っていく作業。何回も書き直した」と新しい詩集について話す和合亮一さん(萩原悠久人撮影)
「自分の奥の奥まで入っていく作業。何回も書き直した」と新しい詩集について話す和合亮一さん(萩原悠久人撮影)

 東日本大震災後にツイッターで詩を発信してきた福島市の詩人、和合亮一さん(50)。震災から8年を迎える故郷の現実は詩人の目にはどう写り、いま何を思うのか。深い思索の跡が刻まれた新しい詩集『QQQ(キューキューキュー)』(思潮社)を糸口に話を聞いた。(海老沢類)

 「その日に感じたことをすぐ書いて、載せる-。キャッチボールのように詩を書いてきて、反動も生まれてきたんですね」と和合さんは言う。

 〈放射能が降っています。静かな夜です〉-。和合さんがツイッターにそんな詩を投稿したのは、平成23年3月11日の震災の数日後。津波や放射能、風評といった苦しみに向き合う日々を実況中継さながらにつづった『詩の礫(つぶて)』は国内外で反響を呼んだ。その一方で、震災後の時の重みそのものを伝える言葉をじっくり紡ぎたいという思いも強くなっていった。

 「完成したと思っても発表せず、壊しては書き直す…。その先にこそ写せる現実があるかもしれない」

やせた牛

 〈やせた牛はのろのろ歩く?/やせた牛は土を踏みしめて歩く?〉…。そう書き出される詩集『QQQ』の表題作は、すべての文章の末尾が疑問形。原発事故後の福島を生きる人々の心を覆う、答えの出ない問いの連続と響きあわせるように、「Q」をタイトルに連ねている。

 実際に目にした光景が基になっている。震災の1年後、和合さんはヘリコプターに乗り、事故を起こした福島第1原発から20キロ圏内の上空を飛んだ。車や船が手つかずのまま散乱するなか、主を失った牛たちも見えた。心に刻まれた超現実的な光景に、〈牛はのろのろと歩く〉と始まる高村光太郎(1883~1956年)の詩「牛」を重ねた。

 「高村光太郎の『牛』は豊かさの象徴でもあった。じゃあ今は?という疑問ですよね」。そんな不条理感覚が、収録された16の詩を貫く。除染作業で〈土の中に土を埋められ〉た庭が描写され、児童の多くが避難し廃校となった学校も出てくる。「時がたち、いつしか当たり前でないことを当たり前に感じている。でも悲しみや痛みが軽くなったわけじゃない。みんな心の奥に眠らせている状況だと思うんです」

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