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【アート 美】志賀理江子 写真展「ヒューマン・スプリング」 精神の極限状態にアクセス

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志賀理江子展「ヒューマン・スプリング」
志賀理江子展「ヒューマン・スプリング」

 巨大な写真群の中をさまようと、不穏な空気につつまれ…。独自の表現で注目される写真家、志賀理江子さんの新作個展「ヒューマン・スプリング」が東京・恵比寿ガーデンプレイスの東京都写真美術館で開かれている。強烈なイメージと、ユニークな展示構成。平成23年3月11日の東日本大震災で被災した写真家が提示する空間には「死」や「喪」のイメージも漂う。(篠原知存)

                   

 会場には順路がない。足を踏み入れると、展示室いっぱいに、写真を張り合わせて作った大きな直方体が並べられている。高さは約1・8メートル。鑑賞者はその間を縫うように歩きながら、作品と向き合う。

 会場外に写真が点々と張られている一方で、展示室内の壁は真っ白のまま。四方の壁沿いにベンチがしつらえている。普通なら観客が立つ場所に巨大な写真が並び、その空間を外側から眺められる。何かを裏返したかのような爽快な感覚がある。

 積み続けられるレンガの山、不気味な色に染まる木立、助け合って泳ぐ人々、打ち捨てられた重機、巨大なテーブルに並ぶ食べ物、焼けただれた家屋…提示されるハードなイメージは、撮影に協力してくれる人とともに生み出したものだ。

 「東北の長い冬の果てに突然やってくる春について、それが生理的に作用することについて、コントロールできない自然について、長い間いろんなことを考えてきました」と志賀さんは口にする。

 直方体のある面には同じ写真がプリントされている。赤く顔を染めた男性のポートレート。会場内の一点から眺めると、同じ顔がずらりと並ぶ。この写真のタイトルは「人間の春・永遠の現在」。印象を残す反復性について、志賀さんはこう話す。

 「私たちは、ふつう生活していて、明日死ぬことを考えない。昨日と変わらない今日があって、今日と変わらない明日があると思っている」

 その言葉に重みがあった。志賀さんは平成20年から宮城県名取市に移住。地元の人たちと一緒に作品づくりに取り組んでいたが、23年3月に東日本大震災に見舞われた。現在も同県内に住んで制作を続けている。直接的に震災を描いた作品ではないが、感じ取れる「死」や「喪」のイメージに切実さを感じずにはいられない。

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