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家畜感染症拡大の背景に迫る 龍谷大

経済学の視点から家畜感染症の研究に取り組む龍谷大農学部の山口道利講師
経済学の視点から家畜感染症の研究に取り組む龍谷大農学部の山口道利講師

 龍谷大農学部(大津市瀬田大江町)の山口道利講師(44)が、経済学的アプローチから豚(とん)コレラや鳥インフルエンザ、口蹄疫(こうていえき)などの家畜感染症が拡大するメカニズムを探る研究に取り組んでいる。拡大の背景には流通システムなどの業界構造や経済的要因が深く関わっているといい、「家畜感染症を考える上で経済学的観点は病理・疫学的な分析に劣らず重要だ」と話している。(花輪理徳)

 山口氏は、平成16年に京都府の養鶏場の経営者が鳥インフルエンザに感染した鶏の大量死を隠蔽したことで被害が拡大した問題を例に挙げ、「家畜感染症の拡大を防ぐには生産者による感染の隠蔽を防ぐことが欠かせない」と説明。その上で、「問題の背景には鶏卵の流通システムが深く関わっていた」と指摘する。

 鶏卵はスーパーなどの小売業者にとっては欠品が許されない商品で、安定的に確保する必要があることから、小売業者は取引する生産者を固定化している。

 「小売業者との固定化された関係こそ、生産者に大きなリスクを負わせることになっていた」と山口氏。生産者が殺処分などで出荷を止めると、小売業者は別の生産者から鶏卵を仕入れざるを得なくなる。緊急時に商品を融通してもらった義理から、「小売業者は元の生産者が出荷を再開しても仕入れ先を戻すことはない」(山口氏)という。

 さらに、感染が判明すると近隣の生産者も出荷停止を余儀なくされ、大きな経済的損失を与えてしまう。

 山口氏は、これら取引先を失うことに対する懸念と近隣生産者への遠慮が「感染の疑いがあっても出荷中断をためらう要因になっている」と分析。「生産者のグループを作るなど業界構造を変えることで生産者の出荷中断によるリスクを低減でき、結果的に隠蔽などに伴う感染拡大を防ぐことにつながる」と訴える。

 一方、昨年9月に岐阜市の養豚場で26年ぶりの発生が判明した豚コレラの感染が拡大した一因には、飼育されているブタへの予防ワクチン接種が行われていない事情があるとされる。

 ワクチンを使用すると撲滅状態を示す「清浄国」にはなれない。政府が推し進める輸出にも支障が出るため、農林水産省はワクチンの接種には消極的な姿勢を崩さない。山口氏は「ワクチンでリスクを回避したい生産者も多いはずだ。生産者の意思決定が外部の経済的要因に左右される顕著なケースだ」と強調する。

 現在の家畜感染症の研究はワクチンの開発などの病理・疫学的アプローチが主で、経済学的観点からの研究は少ない。山口氏は「家畜感染症は『食』にまつわる深刻な問題で、生産者ら当事者の経済的損失を軽減する補償制度などの仕組みが必要」と話している。

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