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【追悼】ドナルド・キーンさん 童心もち続けた「鬼」先生 京都産大名誉教授・所功

平成24年3月、日本国籍を取得し、漢字で当てた名前を手にするドナルド・キーンさん=東京・北区役所
平成24年3月、日本国籍を取得し、漢字で当てた名前を手にするドナルド・キーンさん=東京・北区役所

 ドナルド・キーン先生に初めて直接お目にかかったのは、平成5年10月2日、伊勢の内宮式年遷御(せんぎょ)の際である。同夜8時からの遷御を蓆(むしろ)の席で待つ数時間、先生の相手をするよう神宮司庁から頼まれ、当時ご執筆中の「明治天皇」について話がはずんだ。

 その御縁により、14年11月16日、京都産業大学日本文化研究所主催の講演会にお越し頂き「明治天皇と日本文化」と題する素晴らしい講演を賜った。

 翌日、御礼がわりに何処(どこ)かへご案内することになった。昭和28年京大大学院へ留学以来、京都を知り尽くしておられる先生に尋ねたところ、久しぶりに修学院離宮を訪れたいと言われたが、その日は日曜日で原則として入れない。

 困った私は、修学院離宮の下で御田の耕作を手伝っている友人に相談し、稲刈り後の落穂(おちぼ)拾いに付き添うことになった。友人持参の長靴を履いて落穂を拾われたキーン先生は、鉢巻きをしめておどけ、ジョークを飛ばしながら、まるで子供がはしゃぐよう。休憩のため上段の裏木戸から入れてもらい、紅葉の絶景を眼前にして、「日本古来の農作業を体験できてうれしい」と喜ばれた。自然と一体になれる日本的な感性の豊かな方だと感じ入った。

 キーン先生は、伊勢の式年遷御を4回体験されている。最初は28年、松尾芭蕉のように伊勢の遷宮を参詣したいと、北野天満宮の宮司に相談されたという。このとき体感された浄(きよ)らかな闇がキーン先生に強い印象を残したのも、そうした感性の鋭さゆえであるに違いない。

 東日本大震災後、大好きな日本に恩返しをするため、日本国籍をとり永住を決められた、その翌年の平成25年10月2日、伊勢の内宮で再び同席した。先生は91歳。「これで式年遷御の儀を拝見するのは4度目ですが、日本人としては初めて」と言いながら、「鬼怒鳴門」(キーン・ドナルド)と漢字で大書した名刺を渡された。かつての日本人がたいていそうであったようにシャイで、子供のように純真な、そのときの笑顔が忘れられない。

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