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【書評】杏林大学名誉教授・田久保忠衛が読む『証言でつづる 日本国憲法の成立経緯』(西修著) 汚辱に満ちた過程明るみに

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『証言でつづる 日本国憲法の成立経緯』
『証言でつづる 日本国憲法の成立経緯』

 西修先生は偉大な仕事を成し遂げられた。敗戦後の日本にはめられた枠、日本国憲法の出自に伴う数々の疑問は、とっくの昔に国家が調べを完了すべきだったのではないか。文献渉猟のほかに多数の関係者との間で行われた貴重なインタビューは、西先生のご努力で記録として残った。

 戦争の放棄・軍備および交戦権の否認を定めた第9条の発案者はマッカーサー元帥だったのか幣原喜重郎首相だったのか、いまだに謎だ。そこに幣原発案説としてのマッカーサー証言、回想録、幣原の著作、否定説としての主要閣僚発言、天皇発言、ケーディス・ホイットニー共同発言などがずらりと並び、さらに幣原首相の子息である道太郎をはじめとする関係者とのインタビューが次々に登場する。事実を追っていくうちに、さながら推理小説に没頭しているかのような心境に入り込む。

 西先生は、国際人である幣原がマッカーサー憲法容認の決意をしたのは「天皇制が維持されているという一点」が理由で、幣原だけでなく、内閣および帝国議会の要職を占めた人たちに共通した姿勢だったことを認識しておくことが肝要です-と慎重な表現を使っているが、「犯人」はおのずと明らかであろう。

 著者はマッカーサー記念館で、ピーターセン陸軍次官補がマッカーサー元帥に宛てた至急電を発見する。自衛権維持のための戦力保持を考えて「前項の目的を達するため」の文言を追加したいわゆる芦田修正に極東委員会が敏感な反応を示したことにかんがみ、文民条項の導入を促した電報だ。

 結果は「内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない」の66条第2項になった。自衛隊違憲論を唱える憲法学者がこれに触れようとしないのは、違憲論の根拠が崩れるからだ、と西先生は厳しく批判する。

 学問的価値の高い内容が、読みやすい文章により、公にされた意義は小さくない。日本国憲法の汚辱に満ちた成立過程がこれだけ明るみに出てしまうと、護憲説とは何なのか、疑問が残るだけだ。(海竜社・2500円+税)

 評・田久保忠衛(杏林大学名誉教授)

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