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【三千家「初」釜記】(4)扇子にどんな意味がありますか?

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 裏千家の初釜では、千宗室家元のお点前だけでなく、新年のあいさつや正客らとのやりとりも趣深かった。

 一例を挙げると、茶道では花を「生ける」とはいわず、野にあるそのままの姿を茶室に移し替えるように花を「入れる」という話。上下二段の竹筒の花入れの上段にあえて花を入れず、命の源である水だけを入れるという話にも、美意識を感じた。

 出席者全員が茶を飲み終わると、千玄室前家元はじめ宗家一同そろって年頭のあいさつをされ、家元は亥(い)年にちなみ、「猪突猛進といっていたずらに突っ走るのではなく、しっかり足元を見て頑張ってまいります」と述べた。

 最後に、能の金剛流宗家、金剛(ひさのり)師による祝言の謡曲「四海波(しかいなみ)」が披露され、終了となった。

 終わったからといって、足がしびれてしまった人は、ここで無理に立ち上がろうと焦ってはいけない。私自身、正座は苦手ではないつもりだったが、待合から正座で通したこともあり、すっかり足の感覚がなくなっていた。

 あわてて立ち上がろうとして、不覚にもバランスを失った。隣客に心配されながら、何とかぎりぎり踏みとどまれたものの、転倒して茶室のどこかを傷つけるようなことでもあれば、きっと各社の引き継ぎに新たに記載される「事件」になっていたに違いない。

 濃茶(こいちゃ)の後は、平成茶室二階の看月の間で、祝膳席が用意されていた。玄室前家元や女性陣のきめ細かな給仕を受けながら杯を重ね、茶懐石の老舗「辻留」の点心をいただく。

 ほろ酔いになったところで、書や扇などが当たる恒例のくじ引きが始まった。私は「外れ」だった。

 その後、希望者は茶道会館での薄茶(うすちゃ)席に出席した。厳かな濃茶席に比べると、ぐっと和らいだ雰囲気で、茶道具にも絵柄がついたものを多くみかけた。

 薄茶席では、かれん・ケリー駐大阪・神戸米国総領事と隣席になった。茶会に出席するのは初めてという総領事は、特に客の扇子に興味津々だった。

 厳かな濃茶席では聞くに聞けなかったのだろう。「これは何ですか?」「どういう意味がありますか?」と矢継ぎ早に質問を受けた。付け焼き刃の知識を総動員し、「感謝の気持ちを伝えるためのライン」といってみたが、何を言ってるんだか自分でもわからないと冷や汗が出る。

 「次は私も、ね」という総領事の笑顔とともに、薄茶席も終了となった。

 「次」があれば、私も日本人としてもう少しましな回答ができるようになっておきたい、と心から思った。(山口敦)

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