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【三千家「初」釜記】(3)濃茶は一人で飲むべからず

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裏千家今日庵の初釜式で、西脇隆俊知事(左)から門川大作京都市長(中央)に回される茶碗=1月7日、京都市上京区(永田直也撮影)
裏千家今日庵の初釜式で、西脇隆俊知事(左)から門川大作京都市長(中央)に回される茶碗=1月7日、京都市上京区(永田直也撮影)

 裏千家今日庵(こんにちあん)の初釜式、平成茶室聴風の間に、新年を祝う「花びらもち」が、菓子鉢に載せて配られた。鉢は、最初に受け取った客から時計回りに回される。

 見よう見まねで、「お先に」とあいさつされれば礼を返し、自分が取る番がくれば、次客に「お先に」とあいさつをする。取り出した懐紙の束の外側の1枚を折って束の上に置き、懐紙に菓子を取る。

 礼を繰り返すうち、隣客との間に、ひとときを共にする仲間意識のようなものが芽生えてくる。

 主菓子は、お茶が出る前に残さず食べる。『花びらもちはゴボウが入っているので、ようじでは切れない。懐紙ごと口元に持っていき、そのままかぶりつく』。引き継ぎの丁寧な注釈に感謝しながら、白みそアンの上品な甘みとゴボウの食感を堪能した。

 ゆったりと流れるような家元のお点前に見入る。静寂のなか、水をくむ音、湯の沸く音、釜の蓋を閉める音、一つ一つに不思議なほど気持ちが落ち着く。

 今回呈されるのは、格式が高く、最上級の抹茶が使われる濃茶(こいちゃ)だ。薄茶とは違って粘りがあり、「点(た)てる」ではなく「練る」という。客はそれを、数人で回し飲む。

 家元の練った濃茶が正客に出されると、周囲の客の緊張が一気に高まるのを感じた。「5人様で」。今回は5人で回すようだ。正客グループの所作を、食い入るように観察する。

 目の前に茶碗(ちゃわん)が出されるとまず丁寧に礼。右手で取って左手に載せ一礼。右手前に2回ほど回して茶碗の正面を外して3口半ほど飲む。飲み終わったら、配られていた濡れ小茶巾で飲み口を拭き清める。茶碗を左手に載せ2回ほど回して元の向きに戻し、左隣の客に手渡す。互いに元に向きに戻って礼をする。とにかく丁寧に-。

 あくまで観察と引き継ぎが頼りなので、正式な所作とはとてもいえないかもしれないが、この厳粛な濃茶リレーの一員だと考えると、形だけでも最低限の礼は守りたい。必死にまねる。

 5人目の最後に茶碗が回ってきた。実際に濃茶を飲んでみると、苦いというより、ほのかに甘い。楽茶碗の柔らかな感触を手の内で確かめながら飲み干した。

 かつて某社には、最初に配られた濃茶をひとりで一気に飲み干し、列席者の話題をさらった支局長がいたという。よほど緊張していたのだろう。それでも初釜が中断したとは聞かない。多少の粗相があっても、全てを包み込んで茶会はゆったりと進んでいく。(山口敦)

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