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【三千家「初」釜記】(2)いきなり始まる「非日常」

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【裏千家今日庵で「初釜式」】「初釜式」が行われた裏千家今日庵=7日午前、京都市上京区(永田直也撮影)
【裏千家今日庵で「初釜式」】「初釜式」が行われた裏千家今日庵=7日午前、京都市上京区(永田直也撮影)

 裏千家今日庵(こんにちあん)の初釜式が開催された1月7日は、穏やかな晴天となった。指定時間は午前10時、引き継ぎに従い、30分以上前には着いておく。

 今日庵の向かいに設けられた特設テントでコートや鞄を預け、番号札を受け取った。玄関先で、用意していた白靴下を重ね履きし、待合へ向かう。茶道具や茶室を傷つける恐れがあるので、腕時計や貴金属類は身につけない。

 「非日常」は待合から始まっていた。空気はぴんと張り詰め、言葉を交わす人もまれだ。展示されている茶道具や床の間を拝見する。めったに見ることのできない名品の数々に息をのむが、一つ一つ固有名詞を頭に入れる余裕と知識は、残念ながらまだ持ち合わせていない。窓から見える庭がやけに美しかった。

 待合には、椅子席も用意されていたが、『混み合ってくるので若輩者としては正座がよい』という教えをできるだけ忠実に守り、待つこと約1時間、持ち札の「44番」が呼ばれた。ちなみに待合で確認した白靴下派は3人。ただし女性はほぼ全員が和装だった。

 道路をはさんだ茶室に向かうため、用意されていた草履に履き替える。ここで若干問題が起きた。靴下を二重履きしたため、鼻緒に指がかからず、足が入らない。幼子が大人の草履で歩くようなぎこちない足取りになって道路を渡り、今日庵の門をどうにかくぐった。受付で「年賀」を渡し、震えそうになる手で筆を使い署名する。

 いよいよ、会場の平成茶室「聴風(ちょうふう)の間」に招き入れられた。

 席入りの際、裏千家では右足から入り、左足から出ると聞いていた。表千家ではその逆という。「今日は右足から」と言い聞かせていたものの、実際にどちらから入ったか記憶がない。

 敷居をまたぐと、新年を祝って青竹の花入れから長く垂らされた「結柳(むすびやなぎ)」が目に入った。

 「初心者は亭主に一番近い上席の正客グループと、片付けなどの手伝いがある一番末席は避ける」という助言をハッと思い出し席を見渡したが、分担はすでに決まっているようだ。

 着座する。本番に供え、折りたたみの正座椅子を持ち込んだ総局長もいた。引き継ぎには『ポケットが大きく膨らむので、格好のいいものではない』とあったが、見る限り全く目立たない。同席者は40~50人といったところか。在関西の領事館関係者も招かれていて、椅子も複数用意されていた。

 千宗室家元(62)が入室し、あいさつされた。わかっている客はここでさっと扇子を取り出して前に置き、丁寧に礼をする。私は一瞬扇子を見失い、完全に出遅れた。

 亥年生まれで8回り目の年男となる千玄室元家元(95)が、リラックスするよう外国人客に軽妙な英語で呼びかけると、凜とした緊張感のなかにも、和やかな空気が聴風の間に流れた。(山口敦)

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