PR

ライフ ライフ

【編集者のおすすめ】『新章 神様のカルテ』夏川草介著 シリーズ10周年を飾る傑作

Messenger
『新章神様のカルテ』夏川草介著
『新章神様のカルテ』夏川草介著

 大学病院のことを、「権力闘争に明け暮れる医師たちが集まった伏魔殿」と思っている人は多いようです。テレビドラマの影響が大きいのでしょう。この小説には、「世のイメージが悪すぎる大学病院で、本当は何が行われているのか」が描かれています。

 著者の夏川草介氏は、長野県で地域医療に従事する現役医師です。主人公の青年内科医・栗原一止は、より良い医師を目指し、信州にある「24時間365日対応」の地域病院から信濃大学病院へと籍を移しました。ルールだらけの大組織になんとか順応しながら2年を過ごしましたが、29歳の膵(すい)がん患者の治療方法をめぐり、局内の実権を握る准教授と対立してしまいます。

 大学病院がなければ地域医療は成り立たないのが現実であり、とてつもない技量や知識を持った教授も存在する。しかし、大組織ゆえのひずみや弊害がないわけがない。栗原が患者のためにとった「ルール違反」の行動に、大学病院という組織はどんな評価を下したのでしょうか…。

 堅苦しい紹介になってしまいましたが、夏目漱石を敬愛する一止は、これまでのシリーズ同様、医療の限界を感じながら人間の可能性を信じ、むなしくてあっけない「死」と向き合いながら、ささやかな希望を持ち続けています。

 美しい信州の風景のもと、一止を支える妻ハル(榛名)との間には、小春という新たな家族も加わりました。読んだ人の心を温かくするベストセラー「神様のカルテ」10周年を飾る最高傑作です。(小学館・1800円+税)

 小学館出版局文芸編集室 幾野克哉

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ