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【理研が語る】実際に見る。離れて見る。 梶川義幸

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 青空と雲を眺めるのが好きである。

 

 大学で気象・気候学に触れ、興味を深めて研究者となった私は、現在もコンピューターで計算された雲や雨・風の流れなどの数値シミュレーション結果を、机の上のモニターを見ながら解析している。私たちの住む地球を実験台にはできない以上、地球科学の研究者にとってコンピューターや数値シミュレーションは、今や欠かせないものとなっている。

 実際、私が職場にいる間に一番「見ている」ものは、どう考えても机の上のモニターである。むろん、この原稿を執筆している今も。しかしながら、私にはモニターを通して見ることと同じように重要な「見ること」が、他に2つあるように思える。

 1つは自分の目で「実際に見る」ことである。大学院生の時、幸運にも自分の研究対象である熱帯での気象観測に参加する機会に恵まれた。初めて見た熱帯の雄大な雲は、それまでデータ解析としてモニターの中に見ていた熱帯の気象に新たな風を吹き込んだ。あの時の感覚は忘れられない。研究に対するモチベーションの向上だけでなく、「実際に見る」ことの意味を感じ取ることができた。

 もう1つは「離れて見る」ことである。研究者として最初の一歩を踏み出した時、またしても幸運なことにアメリカで仕事をする機会を得た。初めての海外での生活は刺激に満ちたもので、稀に不便を感じながらも、異なる文化を実体験として学ぶ良い機会であった。しかしそれ以上に、実は自分の国である日本をより深く知るきっかけにもなった。離れて見ることで初めて気づくことが多々あったのである。海外での研究者生活は「離れて見る」ことの大切さをも教えてくれた。

 研究者として、これからもモニターを見つめながら、コンピューターの力を借りて雲や大気の流れの研究を続けていくことは間違いないだろう。一方で、自分の目で実際に見ることと物事を離れて見ること、この2つも心に留めながらこれからも研究を続けていきたい。

 

 なお、青空と雲をより眺めることのできる夏が、より好きである。

 梶川義幸(かじかわ・よしゆき) 理研・計算科学研究センター、上級研究員。名古屋大学環境学研究科で博士号取得。名古屋大学地球水循環研究センター、ハワイ大学国際太平洋研究センターを経て現職。平成28年より神戸大学都市安全研究センター特命教授を兼任。専門は気象・気候学。

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