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【話の肖像画】指揮者・大友直人(60)(9)海道東征に純粋に耳傾けて

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(三尾郁恵撮影)
(三尾郁恵撮影)

 〈大友さんは4月12日、東京都豊島区の東京芸術劇場で交声曲「海道東征(かいどうとうせい)」(信時潔(のぶとき・きよし)作曲、北原白秋作詩)を振る。信念を貫いて国内を拠点に活動を続けてきた大友さんの生き方は、どこか「海道東征」に通じる〉

 私は「海道東征」はおろか、これまで信時潔先生の作品を手がけたことはありません。信時先生がわが国の音楽界に果たした功績は計り知れないものがありますが、これまで不思議と縁がありませんでした。

 ところが、私自身は信時先生と縁がないわけではないのです。私は作曲の勉強もしてきましたが、師弟関係をたどってゆくと、信時先生のひ孫弟子に当たります。私が教わった平吉毅州(たけくに)先生は東京芸術大学で長谷川良夫先生に師事し、長谷川先生は芸大の前身の東京音楽学校で信時先生に学んでいるのです。

 今、譜面を丹念に読んでいるところです。北原白秋の美しい日本語の詩と信時先生の自然な音作りが融合した、ピュアなアイデアにあふれた、心にすっと入ってくる名作だと思います。

 〈「海道東征」は神武(じんむ)天皇即位を紀元とする皇紀2600年を祝うために創作された。初演は昭和15年11月26日、東京の日比谷公会堂。古事記、日本書紀に記された日本建国の壮大な神話、神武天皇が日向から大和を目指される旅を、独唱・合唱と管弦楽で描いた全8章、約1時間の大作である〉

 「海道東征」は奇をてらったところのない、オーソドックスな音作りで、素朴な構成の作品ですから、どうメリハリをつけて曲に味付けをするか。作品の真意を外さないでどうドラマを作ってゆくか。これから北原白秋の詩にも向き合いながらじっくりと勉強します。

 〈今回のプログラムでは、「海道東征」の前にエルガーの行進曲「威風(いふう)堂々」、ブラームスの「ハンガリー舞曲」、外山雄三の「管弦楽のためのラプソディ」が披露される〉

 今回のプログラムにあえて理屈を付けるなら、冒頭に演奏するエルガーの作品は英国の第2国歌であり、英国を象徴するものです。それは日本を象徴する「海道東征」と響き合います。間に挟むブラームスと外山さんの作品は、庶民・市民が娯楽とする音楽のエッセンスが凝縮されています。

 つまり、音楽とは、庶民の暮らしに息づくものであり、かつ国を象徴するものでもある。音楽はかくも幅広いものだということを実感していただきたいと考えています。

 お聴きいただくに当たって、作品の予備知識も大切だとは思いますが、演奏会場では虚心坦懐(きょしんたんかい)に、自分の感性だけで演奏を味わっていただきたいと思います。日本の聴衆の方々は、ネームバリューと肩書で演奏を判断してしまいがちです。企画する側もそこを優先したプログラムを組んでしまう。そのハードルを飛び越えていただきたい。作曲家や演奏家の有名無名は判断基準から外して、鳴り響く音に純粋に耳を傾けてほしいですね。演奏会でお会いするのを楽しみにしています。(聞き手 桑原聡)=次回はNHK元アナウンサーの鈴木健二さん

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