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【正木利和の審美眼を磨く】「中国のセザンヌ」は日本で名を上げた

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 それにより、日本でコレクターが増え、さらに「パリ芸術展覧会」に出品されたことなどで、美術市場での彼の作品の値は、一挙に100倍以上となったとされる。

 北京画院の周蓉氏の「斉白石と20世紀日本の美術界」という論文では、日本で書家、篆刻家として有名だった呉昌碩(1844~1927年)と比較研究されたことや、明快で沈着な画風が当時日本で人気のあった後期印象派のセザンヌに似ている、として「中国のセザンヌ」と評されたことなどが、白石人気を高める背景にあった、とする。

 そうした日本での人気が、排他的だった当時の北京画壇にあった白石の地位を押し上げていったというのである。

 たとえれば、ロックバンド「クイーン」が日本での異様な人気をきっかけにスーパースターの道を歩んでいったようなものであろうか。

 戦後、中華人民共和国が成立したあとも人民芸術家として、その功績をたたえられ多くの賞を獲得した。

 まさに、中国立志伝中の画家だったといってもいい。

     □    □

 極めて個人的なことながら、白石の絵を見ると、ほんとうはため息をつきたくなってくるのである。

 もう20年ほど前に、京都の古美術商で呉昌碩の絵と並んだ白石の絵を見たことがあった。

 呉昌碩の絵はシャクナゲで、色彩も豊か、200万円近くした。一方、白石の絵は厨房(ちゅうぼう)にカモがつり下げられた絵で、75万円ほどだった。

 「白石なら手に入る」

 と、思ったが、絵のテーマがいまひとつだったこともあって結局、あきらめたのである。

 しかし、かの国の経済発展にともない、近ごろではぐんぐんと値上がりしたというではないか。

 「その当時とはケタが2つ違いますからねえ」と同館学芸部列品管理室の呉孟晋(くれもとゆき)主任学芸員。

 確かに、文化大革命という政治の暴挙によってさまざまな文化財を失ったひとびとが豊かさを手に入れたとき求めるのは自己を確認するための文化財に違いない。

 ああ、のがしたあのカモはとてつもなく大きかったのだ。

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