PR

ライフ ライフ

【話の肖像画】指揮者・大友直人(60)(6)日本に根付かないクラシック

Messenger
指揮者の大友直人=東京都千代田区(三尾郁恵撮影)
指揮者の大友直人=東京都千代田区(三尾郁恵撮影)

 〈クラシック音楽はなかなか日本の市民社会に根付かないといわれる〉

 私は日本を拠点に活動していますが、ヨーロッパの指揮台に立つことも少なくありません。そこで強く感じるのは、聴衆がリラックスして自然に音楽を楽しんでいる温かな空気です。演奏家と聴衆の心が通い合っている。

 来日した海外の音楽家は「日本の聴衆は素晴らしい」とほめますが、それは静かに聴いてくれるから。加えてオタクの聴衆が熱狂的な拍手を送ってくれるからでしょう。そこに演奏家と聴衆の自然な心の交流があるようには感じられません。

 〈平成9年に三枝成彰のオペラ「忠臣蔵」、18年に三木稔のオペラ「愛怨」、26年に千住明のオペラ「滝の白糸」など、現役日本人作品の初演を積極的に手がける〉

 クラシック音楽はヨーロッパ発祥であり、18~19世紀に大発展を遂げ、20世紀初頭に頂点を極めました。ですから、聴衆が楽しむためにお金を払って来る演奏会では、それらの作品が中心になるのは必然です。ただ、音楽の世界は常に現在進行形です。「今」が最も活気と熱気のある現場にしなければ、未来はありません。

 かつてはわが国でも盛んに新作が発表されていました。ところが、1980年代以降、その活力が急速に衰えてきたように感じます。その原因の分析は難しいですが、個人的には2つの理由があると考えます。1つは戦争体験という問題。戦争を体験した優秀なクリエーターが真摯(しんし)な作品を創作しようとしたら、どうしたって戦争の影から逃れることはできません。

 (母校、桐朋学園大学の学長を務めた作曲家の)三善(みよし)晃先生もその世代です。戦後70年の間に書かれた作品には深刻な影のあるものが非常に多かった。

 演奏会とはエンターテインメントの場でもあります。聴衆は楽しむためにお金を払ってきてくださる。そこで重く暗い作品を聴かせるのは容易なことではありません。

 もう1つはアカデミズムの問題です。20世紀に入って新しい音楽語法の模索が始まりました。

続きを読む

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ