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【話の肖像画】指揮者・大友直人(60)(5)欧米崇拝から抜けられない

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(三尾郁恵撮影)
(三尾郁恵撮影)

 〈米国のタングルウッド音楽祭に参加したとき、欧米の音楽家の日本の音楽界に対する認識を知った〉

 音楽祭にはゲストとしてクルト・マズア(東ドイツの指揮者)が参加していました。彼のプロフィルを見ると、日本での活動には一切触れていません。彼は1979年に読売日本交響楽団の名誉指揮者になっているんですよ。

 別の機会にヴォルフガング・サヴァリッシュ(ドイツの指揮者)のプロフィルを見ると、「彼の活動は極東を含む」とありました。彼は60年代から毎年のように1カ月ほど日本に滞在し、NHK交響楽団を指揮していました。67年にはN響の名誉指揮者に就任しています。なのに「極東」の一言で片付けられていた。「このままじゃだめだ」と痛切に感じました。現在に至る「おかしな道のり」を歩むきっかけです。

 〈タングルウッド音楽祭では、小澤征爾(せいじ)に胸ぐらをつかまれた〉

 私は音楽祭の翌年の参加者を選ぶオーディションを受けるつもりはありませんでした。それを知った小澤さんに「なぜチャンスを逃すんだ」と説教されました。私にすれば世界を舞台に活躍することよりも、日本の音楽界を変えてゆくことこそ自分の使命ではないか、と考えた上での決断でした。

 あれから38年になろうとしていますが、残念ながら世界の中での日本の音楽界のステータスは当時と大して変わっていないと思います。果たして変えられるのか、今の私には分かりません。ただ、20代の私は「変えてゆかなければならない」と感じたのです。

 〈日本の聴衆も欧米崇拝から抜けきれない〉

 欧米と日本の音楽界のどちらが上で下かという問題ではなく、双方が対等な関係になり、切磋琢磨(せっさたくま)しながら次の時代の音楽を切り開いてゆくことができないか、そう思いながら国内を拠点に活動を続けてきましたが、日本の音楽界も聴衆もなかなか変わりません。極東の島国ではまずヨーロッパ、その下にアメリカ、そのもっと下に日本があるということでしょう。

 現状を直視すれば、決してそんなことはありません。私はこの偏った価値観をほぐして、フラットな耳で音楽に耳を傾けてほしいのです。

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