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「武蔵野をよむ」刊行 民俗学者・赤坂憲雄さん 地域学の枠超えた「武蔵野学」

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赤坂憲雄さん
赤坂憲雄さん

 東北地方の文化や歴史、風土などを総合的に研究する「東北学」の提唱者として知られる民俗学者の赤坂憲雄さん(65)が、地元の東京を拠点に「武蔵野学」を始動させた。「地域学の枠組みを超えて、もう少し大きな視野から私たちが生きているフィールドを照らしていきたい」といい、序章として『武蔵野をよむ』(岩波新書)が刊行された。武蔵野学の示す新たな知見とは-。(篠原知存)

 ◆名著読み解き

 昨年秋に刊行された『武蔵野をよむ』は明治の作家、国木田独歩の短編『武蔵野』を読み込み、描かれた情景の意味、価値観や美意識の源泉を分析する。単なる文学の解説ではなく、登場人物の暮らし、背景となる社会情勢や歴史にも踏み込んでいく思索の深化と飛躍が読みどころだ。

 たとえば、江戸時代には「薄野(すすきの)」として詩情が描かれることの多かった武蔵野に、新たに「雑木林の美」を見いだした独歩の美意識や価値観を読み解きつつ、文化の「継承と切断」を論じていく。

 薄野は江戸時代の開発を経て田畑や里山(雑木林)に転じた。近代以降の都市化と開発で、その雑木林も消えて住宅街が広がった。風景が人間との関係の中で変わり続けていることに気づかされる。

 「僕らが目の前にしている風景は、極めて一時的なものに過ぎない」。歴史を俯瞰(ふかん)する視点から、自然と人間の関係性というテーマが浮上してくる。

 ◆「移民」の地

 「20年足らず、東北学をやりながらも、いずれは武蔵野をやりたい、もう少し風土の感触がわかるところで研究をやりたいと思っていた」。そう話す赤坂さんは平成23年1月に東京に戻ったが、2カ月もしないうちに東日本大震災が発生。以来、被災地を歩き、傷ついた東北から日本の姿を捉え直し、さまざまな論考を発表し続ける。その中で武蔵野学の構想を練ってきた。

 「ふと、自分の父も福島から東京への移民だったと気がついて、東北の村や町から離れたり追われたりした人たち、東京に仕事を求めて行った人たち、移住者たちの群れが見えてきた。東北学には、村を離れた人たちへのまなざしが希薄だったかもしれない」

 武蔵野台地には旧石器や縄文の遺跡なども残る。江戸時代の新田開発。経済成長期の団地やニュータウン。そこここに移住する人々の姿がある。「移民という言葉をキーワードにすると、武蔵野の見え方が変わってきた」という。

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