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【明治の50冊】(43)夏目漱石『三四郎』 色あせない青春小説の古典

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新潮文庫版の『三四郎』(中)。同作や漱石をテーマにした書籍も多い
新潮文庫版の『三四郎』(中)。同作や漱石をテーマにした書籍も多い

 地方から上京した純朴な若者が東京の喧噪(けんそう)に驚き、孤独を感じる。そんなとき出会った都会的な女性に強く心ひかれ…。明治の文豪、夏目漱石が明治41年、朝日新聞に連載した『三四郎(さんしろう)』は、主人公・小川三四郎の迷いと成長をテーマにした小説だ。「あなたは余っ程度胸のない方ですね」「迷える子(ストレイシープ)」など心に残るせりふも含め、「青春小説の古典」は今に至るまで人々の心を震わせてきた。

 「漱石は『どういう日本語を書けばいいか』を示し、多くの後進作家を育てた日本文学の大恩人ですが、はっきり言って小説はうまくありません。『国民作家』のイメージが先行しすぎ、指摘しづらい雰囲気がありますが…」

 漱石の入門本『漱石を知っていますか』を一昨年に出版した作家の阿刀田高さん(84)は、このように語る。

 「ただ、『三四郎』は何度も読み返したくなる作品ですね。上京する列車内の出来事を描いた第一章で、三四郎は相席した女性と一晩同じ部屋に泊まったり、男性から『日本論』を聞かされたりする。作品全体を貫くモチーフが冒頭で示されており、小説としての姿が良いと思います」

 東京帝大に入学するため九州から上京した三四郎は、ある日、里見美禰子(みねこ)という都会的な女性に偶然出会う。思わせぶりな態度を取り続ける美禰子に、次第に淡い恋心を抱く三四郎。「当時の日本人は恋愛の作法にうとかった。だからこそ、読者は同じく恋愛のことをよく知らない若い三四郎をかわいく思ったし、共感したのでは」(阿刀田さん)

 当時のエリートである東京帝大生たちの日常生活の描写も読者の憧れを強く喚起。森鴎外らにも刺激を与えた。阿刀田さんは「(三四郎が慕う)広田先生の言葉を通じた漱石の痛烈な批判精神や、東京の華やかな空気にカルチャーショックを受けた三四郎と同じく、当時の読者も衝撃を受けた」と推測する。

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