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【アート 美】旅するフェルメール 全点踏破へ欧米巡礼

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アムステルダム国立美術館で「牛乳を注ぐ女」に見入る人々 (植本一子「フェルメール」から)
アムステルダム国立美術館で「牛乳を注ぐ女」に見入る人々 (植本一子「フェルメール」から)

 17世紀オランダの巨匠、ヨハネス・フェルメール(1632~75年)は旅心を誘う画家であるらしい。43年の短い生涯で残した作品は少なく、現存するのはわずか35点ほど。その魅力にとりつかれ、欧米各地に散らばった作品に会いに出掛ける人は後を絶たない。自分の目と心でフェルメールの画業全体をたどることで、見えてくるものがあるようだ。(黒沢綾子)

 ■街の空気とともに

 画家の故国オランダに7点。ドイツ6点、英国5点、フランス2点、アイルランドとオーストリアが各1点。そして大西洋を渡り米国に12点。他にも個人蔵1点と、真偽の判定がついていない作品が数点あり、このうち「聖プラクセディス」は現在、国立西洋美術館(東京・上野公園)に寄託され常設展示されている。

 ノンフィクションライター、朽木ゆり子さんの『フェルメール全点踏破の旅』(集英社新書)など、“巡礼”の参考になる本はいくつか出版されているが、昨秋刊行の『フェルメール』(ナナロク社 ブルーシープ)はちょっと“異質”な一冊。著者の写真家・文筆家、植本一子(いちこ)さん(34)は「もともとフェルメールに特別な興味はなかった」と言う。光と人物の表現が巧(たく)みな作家として白羽の矢が立ったのがきっかけで昨春、7カ国17の美術館を取材。写真と文章でその旅路を綴(つづ)った。

 オランダ・マウリッツハイス美術館の「真珠の耳飾りの少女」を皮切りに一点一点に向き合い、絵を見ること、撮ることに自問自答を重ねてゆく。そしてどんどんフェルメールの世界に引き込まれてゆく過程に、読者も同伴しているような感覚になる。「(フェルメールに)情がわいた、という表現がしっくりくる」と植本さんは笑う。

 デジタルではなくフィルムで撮影した写真は、美術館や街に流れる空気、絵を見つめる人々の息づかいまで柔らかく伝えてくれる。

 「いろんな街でフェルメールの絵は大切に受け継がれている。ずっと愛されるもの、言葉を超えた強さを持つもの…そういうものは簡単に作れないけれど、自分も近付けたらいいなと思いました」

 最後の訪問地は米ボストンのイザベラ・スチュワート・ガードナー美術館。そこにフェルメールの絵はなく、空の額縁だけが飾られていた。

 同館所蔵の「合奏」が盗まれたのは1990年。真のフェルメール全点踏破には現状、大きな壁があると言わざるを得ない。

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