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【高論卓説】出国者数「過去最多」の意味 景気回復、働き方改革… 磯山友幸氏

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年末の出国ラッシュで賑わう成田空港=平成30年12月28日午前(荻窪佳撮影)
年末の出国ラッシュで賑わう成田空港=平成30年12月28日午前(荻窪佳撮影)

 日本政府観光局(JNTO)が16日に発表した2018年の年間訪日外国人客数(速報値)は3119万1900人と、前の年を8・7%上回って過去最多を更新した。いわゆる「インバウンド」の活況が続いており、日本経済にも大きな効果をもたらしている。

 一方、なかなか注目されないが、同時に発表された「アウトバウンド」、つまり出国する日本人の数にも大きな変化が出ている。昨年1年間の出国日本人は1895万4000人。12年に記録した1849万657人を突破、6年ぶりに過去最多を更新した。

 12年は猛烈な円高が追い風になって海外旅行ブームが起きた年で、前の年に比べて8・8%も出国者が増えた。その後はアベノミクスで急速に円安が進んだため、海外旅行が割高になり13年から15年まで3年連続で出国者がマイナスになった。何と3年で200万人も減っていた。

 それが再び増加に転じ、16年は5・6%増、17年は4・5%増と推移、18年は6%の伸びになったもようだ。月ごとの統計でみると、昨年10月は前年同月比12・8%増、12月は10・9%増と大幅に出国者が増加しており、過去最多を更新する原動力になった。

 ではいったいなぜ、出国者が増えているのか。

 6年前のような円高効果ではないのは明らかだ。考えられるのは、「景気」の回復。企業の海外出張が増えているほか、家族での海外旅行なども増加傾向にあるようだ。

 安倍晋三首相は、長年「経済好循環」を政策目標に掲げ、好調な企業収益を背景に賃上げを行うよう経済界に要望し続けてきた。そうした賃上げの効果が、ようやく旅行消費という形で表れてきた、ということなのかもしれない。

 百貨店などでの「モノ」の消費はまだまだ低迷が続いており、消費回復は実感できない。一方で、消費の形が、「モノ」から「コト」へと移っているといわれており、まずは旅行から火が付き始めたという見方もできる。イマ流の消費動向というわけだ。

 もう一つ、「働き方改革」が出国者の増加を後押ししているという見方もある。

 企業は残業の抑制や、有給休暇の取得促進に動いている。もしかすると、休みが取りやすくなった分、海外旅行に出かけるチャンスが増えているのかもしれない。

 今年は新しい天皇陛下の即位に伴い、5月に10連休が予定されている。旅行会社によると大型連休中のパッケージ旅行などの予約は出足が好調だという。

 もっとも、海外旅行に行くのは景気が良くなったからではない、という見方も成り立つ。インバウンドで日本に押し寄せる外国人が増加し、国内のホテルや旅館の価格が急騰している。国内旅行の価格が高くなった分、割安な海外旅行に再び日本人がシフトしている、というのだ。LCC(格安航空会社)の普及で、海外旅行の価格単価が安くなっていることも背景にありそうだ。

 出国数の最多は景気の良しあしのどちらを示していると見るべきなのか。今後の動向が注目される。

                ◇

 いそやま・ともゆき ジャーナリスト。早大政経卒。日本経済新聞社で24年間記者を務め2011年に独立。 

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