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【本ナビ+1】「もう一人の自分」映し出す『影を歩く』(小池昌代著) シンガー・ソングライター丸山圭子

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シンガー・ソングライターの丸山圭子さん(萩原悠久人撮影)
シンガー・ソングライターの丸山圭子さん(萩原悠久人撮影)

 詩人、小説家である著者が「影」をテーマに詩と掌編小説で構成した作品。

 「これが私かって。自分の影もまた、一つの自画像なのよね」(「対話 まえがきにかえて」)と著者。そして、影の深淵(しんえん)は自身の「生」を照らし出すとも。

 私たちは日々の忙しさに追われ、目の前にあるものをそのまま現実として受け止め、奥に潜む何かを感じ取る感性のスイッチを切ってしまう。著者は流れる時間の中、あふれる感性で現実を奥深く切り取り、詩的に表現していく。

 小説は、いずれも女性ならではの目線で描かれた13作。年老いた夫が亡くなる際の妻の孤独と深い愛(「西日のさす家」)、お嬢様育ちの独身女性が発した「性夢」という言葉に翻弄される後輩女性の姿(「柿の木坂」)、幼い頃に両親が無理をして買ってくれたピアノを処分するまでの逡巡(しゅんじゅん)(「象を捨てる」)…。

 とても女性的、感覚的な作品だが、それぞれの人生、感性のアンテナで想像力豊かに読めるだろう。折々で錯綜(さくそう)する心の揺れは、最後は深く激しく、「生」への愛(いと)おしい思いになっていく。小説と、その合間に挿入される4編の詩の漂うような言葉の波に揺られ、読み進めるほどに、影の世界に引き込まれていく。

 思えば、私も子供のころ、踏めない影を追いかけてはしゃいだり、今も黄昏(たそがれ)時の公園で、落ち葉の上にのびる自分の影を見つめては写真におさめたりしている。そこには確かに、もう一人の自分が映し出されているようで、影を踏めないように、もう一人の自分のことは永遠につかめないような気もする。

 「妙に静かな一日だと思ったら影だらけじゃありませんか」

 本を開くと飛び込んでくるこの一言が、読み終えた時、さらに心に染み入るはずだ。(方丈社・1600円+税)

                   

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