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【話の肖像画】元最高裁判事・園部逸夫(89)(9)

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 ■平成は戦争がなかった時代

 〈「真意」を聞きたいことがもう一つあった。永住外国人への地方参政権(選挙権)付与をめぐる平成7年2月の最高裁判決で、本論部分では「否定」しながら、主文に関係ない「傍論」では「憲法上、禁止されていない」との判断を示したことだ。22年の本紙インタビューではその判断に「(在日韓国・朝鮮人への)政治的配慮があった」と語っている〉

 最高裁としてもこの問題を重要視している、という配慮があったのは事実です。「日本がどういう態度を取るか」ということは韓国などに注目されていましたからね。ただし、これは歴史的経緯がある在日韓国・朝鮮人ら、特別永住者に限ったことです。(在日中国人ら他の)一般永住者に関わるものではありません。

 この判決の前段に、台湾の元日本軍人・軍属による補償請求訴訟(4年、最高裁第3小法廷で、上告棄却の判決)がありました。戦没者・戦傷病者に関する補償・救済は「自国民のみ」に行うのが原則ですから、自国民ではなくなった人に対して行われなくても、法的には不平等な差別には当たらない、としたものです。

 ただ私が、日本統治下の朝鮮で生まれ、台湾で育ったという心情的な思いはありました。かつては同じ「日本人」であり、ほかの外国人とは違う親近感がある。特に台湾の人たちとは同じ軍隊にいて、同じように戦った。今さら「あなたたちは外国人じゃないか」と突っぱねるだけでいいのか、という思いがあって、この台湾の裁判では個別意見を書きました。

 日本の朝鮮統治を知る人も少なくなっています。今の日本の若い世代の中には、「なぜ(韓国・北朝鮮は)あんなに反日なんだ。気分が悪いだけだ」と感じている人もいるでしょう。公の関係がぎくしゃくしても、個々の立場の関係は親しくあるべきだと思います。

 〈昨年12月、天皇陛下は平成最後の誕生日の記者会見で、先の大戦で悲惨な経験をした沖縄の人などに対して思いをはせながら「平成」を振り返り、戦争のない時代として終わろうとしていることに「心から安堵(ど)しています」と述べられた〉

 私も「平成」を振り返るならば、やはり「戦争がなかった時代」だと思います。それがどれほどありがたいことか、昭和の初めに生まれ、軍隊にも行った私にはよく分かります。いつ、お父さんが兵隊に引っ張られるか分からないようなことがなくなったのですから。

 その安心は随分、考え方を変えたでしょうね。少なくとも、わが国自らが戦いに入ってゆくことはないのです。ただし、相手の国からは戦争を仕掛けられるかもしれない。いざ日本に大軍が上陸してきたらどうするのか。逃げ回っているだけ、というわけにはいきません。

 どんなことになっても、私は日本人が好きです。日本人に生まれたことを誇りに思っています。これからは多くの外国人が入ってくる時代になるでしょう。日本という国の形をどうしてゆくのか。新たな時代を迎えるこの時期が、改めてもう一度、考え直してみるいい機会になるかもしれません。(聞き手 喜多由浩)

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