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【話の肖像画】元最高裁判事・園部逸夫(89)(6)寮歌を「日本遺産」にしたい

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寮歌の会であいさつする園部逸夫さん
寮歌の会であいさつする園部逸夫さん

 〈一昨年、旧制高校などの寮歌を振興・伝承する「日本寮歌振興会」の会長に就任した。過去に永野重雄(元日商会頭)、大槻文平(元日経連会長)、藤林益三(えきぞう)(元最高裁長官)の各氏らそうそうたる大物が務めたポスト。寮歌祭の実施や、寮歌の「日本遺産」認定を目指すとともに、今こそ「旧制高校の教育を見直すべし」と力を込める〉

 昭和25年を最後に廃止された旧制高校を知っているのは、もう私たちが最後の世代です。その教育を経験した人たちが今、立ち上がって、次代へ伝えてゆく仕組みをつくらないと、このまま消えてしまうでしょう。

 戦後の学制改革(六三三四制)は、やはり失敗だったと思います。今の(新制)高校は、東大・京大といった有名・難関大学へいかに入れるかという受験教育ばかり。「自ら考え、何を学ぶか」という大事なことが置き去りにされてしまっています。

 旧制高校は、民主的な運営がされ、教養教育、人間形成が重視されました。成績さえ良ければ、入学に関しても差別がない。旧制高校と帝国大学の定員はほぼ同数。高校入学でふるいにかけられた後は、えり好みさえしなければ、どこかの帝国大学へ入れたから、受験勉強などをせず、存分に本を読み、たっぷりと思索する時間があります。

 しかも、各地方に分散して順次、つくられたので、地方にいながらエリート養成ができた。この、日本人がつくった旧制高校というシステムをなぜ廃止してしまったのか? ぜひとも残すべきでしたね。

 〈「嗚呼(ああ)玉杯(ぎょくはい)に花うけて」(一高)、「紅(くれない)萌(も)ゆる」(三高)、「北帰行(ほっきこう)」(旅順(りょじゅん)高)などに代表される寮歌は、学生自身の手によってつくられたもので、120年以上の歴史があり、その総数は千とも2千とも。旧制高校や後身の新制大学のOBや寮歌愛好家が集まって歌う寮歌祭は今も全国各地で開かれている〉

 寮歌には、自治・自由といった旧制高校の精神が込められています。それは、民主主義でも国粋主義でもない。日本人独特の「覇気」というべきものでしょうか。ぜひ「日本遺産」にしたいと思う。単なるノスタルジアではなく、日本遺産に認定されれば、どういう教育が行われたか、も浸透するでしょうから。

 〈戦前の教育制度は、いろいろな選択肢がある“複線”システム。旧制高校-帝国大学コースは同世代の1%という、国を背負って立つエリートの自負と責任感があった。一方で、小学校卒で職人や商人になる道もあれば、実業学校や専門学校で技術や実学を学ぶこともある。今や大学進学率が50%を超え、皆が金太郎アメのように“単線”を歩む〉

 戦後、新制大学に組み込まれた教養課程はまるで違う。いわゆる旧制高校的な伝統は残りませんでした。今や、大学の数ばかり増やしてしまって、大衆化も極まれり、といった状況です。戦後の教育はよりどころをなくしてしまった。「旧制高校を復活させよ」とは言いませんが、現代に生かせる部分は大いにあると思うのです。(聞き手 喜多由浩)

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