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【書評】『鼓に生きる 歌舞伎囃子方 田中佐太郎』田中佐太郎、氷川まりこ著

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『鼓に生きる 歌舞伎囃子方 田中佐太郎』田中佐太郎、氷川まりこ著
『鼓に生きる 歌舞伎囃子方 田中佐太郎』田中佐太郎、氷川まりこ著

 ■「家」をつなぐ家族の物語

 田中傳左衛門家は、江戸時代から続く歌舞伎囃子(ばやし)を専門とする家柄である。舞台上の出囃子として小鼓、大鼓(おおつづみ)、太鼓を演奏し、黒御簾(みす)内の陰囃子としても、そのほかさまざまな鳴物、打楽器を担当している。

 田中佐太郎は昭和23(1948)年、家元である十一世傳左衛門(人間国宝)の三女として生まれた。歌舞伎は厳格な男社会であり、女性が表舞台に立つことはない。だが、同家を継ぐ男子がいなかったため、佐太郎が父から技のすべてを受け継ぎ、それらをいつか自分が産む男の子に伝承する使命を担う。

 まるで「懸け橋」のような運命を、8歳で鼓の稽古を始めた少女は素直に受けとめ、つらく厳しい芸の道に身をささげる。

 本書は聞き書きとしてまとめられている。半生をふり返る佐太郎の静かな語りの合間に、客観的視点で述べられる解説や家族のインタビューが挿入され、佐太郎の人物像が多角的に浮き彫りにされる。

 佐太郎は六世中村歌右衛門の力添えもあって、男ばかりの歌舞伎座で、舞台下手の黒御簾内に限って演奏することを許される。地味な色の着物を着て、私語は厳禁、笑顔は無用の仕事場だ。

 やがて能楽師で葛野(かどの)流大鼓方の亀井忠雄氏(人間国宝)と結婚し、3人の息子をそれぞれ一流の演奏者に育てあげる。それだけではない。早くから後進の指導にもあたり、今、歌舞伎囃子で舞台に出ている人のほとんどが佐太郎の教えを受けているという。

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