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【日本人の心 楠木正成を読み解く】序章(1)皇居外苑 振り向かれぬ英雄

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 山が動くように一気に攻めてくる相手にわずかの手勢ながら一歩もひかず、地の利を利用して撃退する正成の知将ぶりが描かれる。『太平記』は後世、寄席で講釈師が名調子で語り、庶民の心を揺さぶった。

 正成の講釈は大人気だった。司馬遼太郎は随筆集『余話として』で、大阪の町絵師の回想を紹介している。明治20年ごろ、長屋の寄席で1年間にわたり『太平記』を読む講釈師がいたが、ロングランなのでどうしても途中、ダレてしまって客の入りが悪くなる。そこで講釈師は正成が登場するくだりになると、「門口に“今日より正成出づ”という貼り紙を出します。すると、どっと…」客が集まったという。

                   

 再び馬場先門の銅像前に戻ろう。通り過ぎる人の中には、銅像の説明に見入る人もいる。「関心がないようでも銅像が正成と知ると、興味深く見上げる」(坂元さん)という。

 銅像のそばにある楠公レストハウスのお土産コーナーでは、正成を祀(まつ)る湊川神社(神戸)の屋根瓦をモチーフにした「江戸瓦煎餅(えどがわらせんべい)」が、宮中の伝統菓子「菊もなか」に次ぐ人気だという。坂元さんは「楠公像を忘れても、国家や社会に尽くす『至誠奉公(しせいほうこう)』に徹した正成の生き方は日本人の心のどこかに残っているようです」と話す。

 正成は後醍醐天皇に背いた足利尊氏を京都から追い出したが、とどめを刺さず、天皇には和睦を進言した。実務に長(た)けた武士は天皇に必要との考えからだ。「公」を優先し、信じるものに尽くした正成の生き方に日本人はほれこんだ。

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