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佐藤愛子さん新刊「冥界からの電話」 95歳が描く未知を畏(かしこ)む心

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「私には書くことのほかにできることがない」と話す佐藤愛子さん(桐原正道撮影)
「私には書くことのほかにできることがない」と話す佐藤愛子さん(桐原正道撮影)

 「何でこうも不思議なことに巻き込まれるのか。これを書くのが私の使命だと思ったんです」。今年の年女である作家、佐藤愛子さん(95)の新刊『冥界からの電話』(新潮社)は友人の医師から聞いた奇怪な体験談をつづるノンフィクション。おおらかな筆致の底には日本人の現在と未来への深い憂慮がにじむ。

 先生、わたし、死んだんです-。平成24年、事故死したはずの女子高校生から医師にそんな電話がかかってくる。生前と同じ声で、何回も。いたずら? 何かの憑依(ひょうい)? それとも…。彼女の正体が一向につかめないまま時が過ぎてゆく。

 「会話も友人に聞いてメモした内容そのまま。この事実をどう思う?という書き方しかない、と」。自身の死生観を変えた体験を紡ぐ『私の遺言』(14年)と同様、目を向けたのは死後の「魂の世界」。荒唐無稽だと切り捨てられかねないだけに、読者を誘導せず、淡々と事実を並べていった。その冷静な書きぶりが、私たちに問いかける。この世には人知の及ばぬ物事がたくさんある、それを不思議がる素直な心を忘れていませんか?と。

 「分からないこと、論理で説明できないものをすぐ排除しますね、今は。知的だと自負を持つ人たちは特に。分からないから考えよう、とはならない。未知のものを『怖(おそ)れ畏(かしこ)む』。それは、外国人からも認められた日本人の精神性の高さだったんですけれど」

 そんな想像力の欠如は傲慢さにつながる。昨年話題になった東京都港区南青山での児童相談所などが入る複合施設の建設計画もそう。「港区の価値が下がる」と反対した近隣住民の思考にあきれる。「恥の意識がない。“自己中”は昔もいっぱいいたけれど、あんなふうに口にはしなかった。みな物質的な満足が第一になったんですよね」

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