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2018年の3冊 花田紀凱氏ら各ジャンルの専門家がおすすめ…平成を象徴する1冊も

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 ≪翻訳小説

 ■文芸評論家・池上冬樹

 〔1〕オンブレ エルモア・レナード著、村上春樹訳(新潮文庫・550円+税)

 〔2〕憂鬱な10か月 イアン・マキューアン著、村松潔訳(新潮クレスト・ブックス・1800円+税)

 ★あなたに不利な証拠として ローリー・リン・ドラモンド著、駒月雅子訳(ハヤカワ・ミステリ文庫・900円+税)

 〔1〕エルモア・レナードは犯罪小説の巨匠だが、初期はウエスタン作家で、これは1961年に発表された西部小説。まさか村上春樹が自ら選んで翻訳するとは思わなかったが、読んで納得。アリゾナの荒野で悪党たちと死闘を繰り広げる物語には息詰まる緊張感があり、悲劇性を帯びて、まるで古典劇のような格調の高さを生み出している。

 〔2〕胎児の「わたし」を主人公にした現代文学。母親が視聴するテレビやラジオから膨大な知識をたくわえて思弁と分析を繰り広げ、母親と叔父が練る父親殺人計画を阻止しようとする物語だが、驚くほどサスペンス豊かで意外性もある。生きることの意味や正義を追求する独創的で挑戦的な犯罪喜劇だ。

 ★女性警官5人が主人公の警察小説(2006年)だが、細部の緻密な写実性、内部への沈潜の深さ、静謐(せいひつ)で揺るぎない完璧な文体と味わいはほとんど純文学。たとえば吉村昭がもちえた徹底したリアリズムの強さ、叙事が生み出す詩情の輝きを、僕らはアメリカの警察小説で見いだす。あるいは北欧ミステリでも。戦争や震災に見舞われる時代に、国境やジャンルを超えて、文学がより深く読者の心を揺さぶるようになった時代の走り。

                   

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