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プログラミング教育が大学受験にも影響 小学生でも始まる“先どり教育”

 受験シーズンが迫る中、2020年度からセンター試験の代わりに導入される大学入学共通テストの試行調査が11月、全国で実施された。マークシート式の問題だけでなく、思考力や表現力を測る記述式の問題に約8万4000人の高校2・3年生が臨んだ。

 従来の詰め込み教育から脱却する方針はセンター試験廃止以外のところにも表れている。文部科学省は小学校、中学校、高校の教育方針を示す新学習指導要領で、情報活用能力の育成を「学習の基盤となる資質・能力」と位置づけ、2020年度から小学校で論理的思考力を育てる「プログラミング教育」を必修化すると決めた。大学受験でもパソコンを使った試験が検討されている。

 パソコンメーカーなどから成る業界団体WDLC(ウィンドウズ デジタルライフスタイル コンソーシアム)は教育改革が本格的にスタートする2020年度を「学びのターニングポイント」と呼ぶ。同団体は公式サイトで、パソコン購入者向けに作成したレッスン動画を期間限定で無料公開し、家庭用の学習用パソコンで授業を先取りする重要性を訴えている。

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小中高で行われる「プログラミング教育」とは

 小学校でプログラミング教育が必修化されると言っても、プログラミング言語を用いてプログラムを記述する「コーディング」を中心に教えるわけではない。課題を解決するためにはどんな手段が必要なのか、その手段をどんな順番で実行するのが適切なのかという「プログラミング的思考」を学ばせるのが狙いだ。

 だからといって児童がパソコンに触れなくてもいいというわけでもなさそうだ。確かにパソコンを使わずボードゲームなどでプログラミング的思考を養う「アンプラグド」方式の学習が準備段階で導入されることは考えられる。小学校向けの学習指導要領では文字入力などのコンピューターの基礎操作を習得することや「児童がプログラミングを体験」することが求められており、パソコンを使った学習が行われる可能性は高い。

 では、どのような授業が行われると予想されるだろうか。小学校では、既存の科目の中にプログラミング的思考を刺激する授業が取り入れられるだろう。例えば理科の時間に、人が近づくと点灯するライトなどの暮らしに役立つプログラムについて考えさせる。専門知識がなくても扱えるソフトウェアでコンピューターにどのような「命令」を与えればいいかを話し合わせる、というように、正解よりも物事を整理して論理的に考える過程そのものに重点が置かれる見込みだ。

 中学校では、2021年度から「技術・家庭科」の技術分野が拡充され実践的な技術と知識を習得する。生徒がプログラムを制作し、動作を確認する授業が行われ、バグ(プログラムの誤り)を見つけて除去する「デバッグ」という作業にも焦点が当てられる。情報通信ネットワークの仕組みなども学ぶという。

 高校では2022年度から、必修科目「情報I」でプログラミングに関する授業が高度化。社会課題の解決について考える授業では、人工知能や画像認識など社会で広く活用されるテクノロジーを利用したソフトウェアを開発することもあるだろう。

 大学入試では2024年度から、大学入学共通テストでコンピューターを使って受験する「CBT(Computer Based Testing)」方式の導入、そしてプログラミングなどの情報科目の導入が検討されている。

最初の関門「タイピング」

 小中高での学習内容を並べてみると、一般的にプログラミングと呼ばれる領域に取り組むのは中学校からだが、その基礎を小学生のうちに身に付けておくに越したことがないということが分かる。基礎が大事なのは国語や算数などでも同じだが、プログラミング教育に関しては小中学校で躓いた児童・生徒に“救いの手”を差し伸べられる十分な知識を備えた大人が、現状では多くないという不安要素もある。

 そうした背景もあり、WDLCは小学生のうちから取り組んでおけば社会人になっても役に立つ「これから必要な3つのスキル」を挙げ期間限定でレッスン動画を公開している。

 1つ目は「タイピング」。文科省は「小学校中学年以上では、いわゆるハードウェアキーボードを必須とすることが適当」としている。タイピングは初めてパソコンに触る児童にとって最初の関門であると同時に、鉛筆の持ち方に相当する重要なポイントだと言える。タイピングができるだけでパソコンへの苦手意識が変わってくる。

 2つ目は「Officeの操作」。マイクロソフトのOfficeに含まれる文書作成ソフトのWord、表計算ソフトの Excel、プレゼンテーションソフトのPowerPointはそれぞれの分野で事実上の標準ソフトであり就職してからも使う機会が多い。小中学生のうちはPowerPointでテンプレート(雛形)を使い、文字や写真を駆使して社会の授業で使う発表資料を作ったり、Wordで学校行事のポスターを作ったりする機会があるかもしれない。身に付けておけば年賀状づくりや小遣いの支出記録など、子供の実生活で役立つ場面も多い。

 3つ目は「プログラミング的思考」。レッスン動画では「ボタンが押されたとき」「アイコンを表示する」などの「命令」が書かれたブロックをウェブブラウザ上で組み合わせる「MakeCode(メイクコード)」を使って、パソコンに接続したマイクロコンピューター「micro:bit(マイクロビット)」のLEDを意図したように光らせるにはどうすればいいかを考えさせ、論理的思考力を育てる内容になっている。

 プログラミング教育の必修化が迫る小学校の現状はどうだろうか。WDLCは全国の小学校・教育委員会の計200団体にmicro:bitを20台ずつ送り、プログラミング教育の授業の報告書を教員らから募って公式サイトに公開する「MakeCode × micro:bit 200プロジェクト」でプログラミング教育の活性化を促している。

 WDLCは11月16日~11月26日の期間に、同プロジェクトに参加している小学校の担当者にインターネットアンケート調査を行い104の回答を得た。それによると52.9%がすでにプログラミング教育を実施していることが分かった。まだ実施していないが今年度中に実施するという回答と合わせると84.6%と高い数値を示した。

その他、学校のパソコンでは学習で使うソフトウェアをダウンロードできない、USBが使えないなど、各校が作ったウイルス感染対策の取り決めがプログラミングの授業とマッチしていない課題も浮き彫りになった。

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 必修化に先がけ、子供たちの創造力をプログラミングの形で発揮させる動きもある。東京都文京区の東京学芸大学附属竹早小学校で12月4日、日本マイクロソフトの社員など17人のボランティアが5年生のクラスを対象にmicro:bitを使った特別授業を行った。約30人の児童は、記述した順に処理を実行させる「順次実行」、条件によって処理と結果が変わる「条件分岐」、特定の条件下で同じ処理を繰り返す「繰り返し(ループ)」というプログラミングの基礎となる考え方を工作のような感覚で捉えたようで、micro:bitを右に傾けるとLEDに右向きの矢印が、左に傾けると左向きの矢印が表示されるプログラムなどを自由に考えて作成していた。

プログラミングの特別授業が行われた東京学芸大学附属竹早小学校
プログラミングの特別授業が行われた東京学芸大学附属竹早小学校
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学校のPCのOSは94%がWindows

 以前から、小学生の約3分の2は、現在は存在していない職に就くと語られている。数十年前にデータサイエンティストやサイバーセキュリティーの専門家など、今の社会で重用される職業がなかったように、テクノロジーの発達と社会の変化が新しい仕事を生み出していく。この動きは今後も加速するのだろう。

 プログラミング教育の必修化は、2030年までに最大で79万人の人手不足になると予測されるIT人材の確保という目的もあるが、大きく変わっていく社会で生きていくための思考力を養う面こそが重要だ。文科省は小学校に「3クラスに1クラス分程度」の学習用パソコンを置くことを目標にしているが、プログラミング教育を先取りして学習するには子供用のパソコンがあることが望ましい。

 10月に文科省が公表した「学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果」によると、全国の小中高と特別支援学校などに設置されている約210万台の教育用コンピューターのOS(基本ソフト)は、約94%がWindowsだった。最多は2020年1月にサポートが終了するWindows 7の約80万台。その多くがプログラミング教育スタートの時期までにWindows 10(現状で約53万台)に置き換わると見られる。子供に初めて与えるパソコンのニーズが高まる中、学校のパソコンと使い方が似ており、望ましくない使い方を制限できるファミリー機能やウイルス対策が充実した製品に注目が集まっていくだろう。

My First PC ~はじめてのマイパソコン~

学校のプログラミング教育を応援「MakeCode×micro:bit 200PROJECT」

(提供 WDLC)

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