PR

ライフ ライフ

【書評】『照明家(あかりや)人生 劇団四季から世界へ』吉井澄雄著 照明が観客と演者の出会いを導く

Messenger
『照明家(あかりや)人生 劇団四季から世界へ』吉井澄雄著
『照明家(あかりや)人生 劇団四季から世界へ』吉井澄雄著

 一枚の舞台写真が本のカバーに使われている。劇団四季「ハムレット」初演(1968年)、亡霊となって現れた父王がハムレットに謀殺のいきさつを明かす場面だ。蒼(あお)白い光の中に立つ王、手前には槍(やり)を構えた兵士たちが闇の中にゆらいでみえる。わが国で照明家の地位を確立した著者の半世紀前の仕事である。

 照明の仕事は素人目にはわかりにくい。しかし、一筋の光が舞台を変容させる。読売演劇大賞芸術栄誉賞を受けた際、「けものみち」と振り返ったように、照明器材の導入を含め色彩豊かな舞台が観(み)られるようになるまで困難な道を開拓してきた。本書はその半生史であり、日本の舞台芸術の歩みそのものでもある。

 モノを照らすだけの役割から今や照明はドラマの進行まで司(つかさど)る。説明がましい装置はなくとも、人物に瞬時の光を落とすだけで劇空間が決まる。美しい舞台に出合ったとき、照明デザイナーの名前を探すことも多い。

 戦友-浅利慶太、蜷川幸雄、二代目猿翁(三代目市川猿之助)との仕事は国際的な窓を開けた。個人的な記憶では、日生劇場でのジャン・ジロドウ作品の上演「オンディーヌ」「間奏曲」、英国での「NINAGAWAマクベス」「王女メディア」、スーパー歌舞伎「ヤマトタケル」等。デンバーでの「タンタロス」は英国ナショナルシアター芸術総監督・ピータ・ホールの指名によるものだ。海外でこれほど重用された日本の照明家はいないだろう。まさに「本の読める照明家」であり、色彩の華麗さを特徴とする。著者はいう、照明とは観客と演者が同一空間で一瞬の出会いを助ける仕事なのだと。

続きを読む

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ