PR

ライフ ライフ

【ゆうゆうLife】家族がいてもいなくても(573)70歳の初体験

Messenger

 足の痛みが続いている。

 薬を飲んだり湿布を貼ったりしてやり過ごしていたが、治りそうで治らない。

 周りからは、「しのいでいるうちに、痛みが終わる日がやってくる」と言われていたけれど、体のどこかが痛いと心身が疲れ果てる。仕事が一段落したのを機に、積極的治療に乗り出すことにした。

 実は、元小学校の人形劇の「部室」は、お隣が「こころと体の健康室」。整体とか指圧とかエネルギー治療とか、いろんな人たちがいろんなプログラムをやっているのだ。

 まずは整体の治療をしてみようと、予約を入れた。

 その順番を、校内の喫茶室から、日の暮れかかった元校庭を眺めて待つ。夕方4時を過ぎると、あたりは急速に暮れていく。それとともに、こちらも子供のように心細くなる。

 施術を終えたら真っ暗に違いない。「まずかったな、もう家に帰りたいなあ」と心細くなっていたら、整体の先生が喫茶室に駆け込んできた。

 施術を終えたお客さんを、あっちに住む人はあっちの方へ、こっちに住む人はこっちの方へ、車で送ってくるので、しばし待っていてくれる? と。

 聞けば、「あっちに住む人」は、私の住む住宅の隣人。ならば、「彼女は私が車で送るわ」と言ったら、先生が「じゃあ、こっちの人を送り終えたら、あなたの部屋に出張してあげるわ」と。

 臨機応変。これは交通手段のない過疎地ならではの助け合いなのだ。

 かくして、夕食前に自分の部屋に簡易ベッドをしつらえてもらい、のんびり施術を受けることになった。

 五十肩と足の捻挫で整形外科で治療を受けたことはあるけれど、何を隠そう、東洋医学系は初体験。

 固くなった筋肉をもみほぐし、伸ばし、体を整える、ここまでは想定内だったが、患部にお灸(きゅう)をしたり、はりを打ったりすると聞いて、たじろいだ。ツボに刺激を与えて血液やリンパ液を流すと、自然と傷を修復してくれるのだそうだ。

 この「自然治癒力を高める」というのが好ましく、熱くても痛くても耐えることにした私だが、この年齢になったら、常に自分の体をメンテナンスしながら生きていかねば、と納得した瞬間だった。

 それにしても、周りに聞いたら、70歳にもなってお灸もはりも初体験なんて人はいなかった。やることなすこと初体験ばかりのこの頃。ふと、これまでどういう人生をたどってきたのだろう、と首をかしげてしまったのだった。(ノンフィクション作家・久田恵)

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ