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【夕焼けエッセー】虫の居所

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 明日、10月7日は英検の試験日だ。受験票を見ながら持ち物を確認する。

 「受験票は、身分証明書は、鉛筆は、消しゴムは、時計は」と、いまは亡き夫の声を思い出しながらチェックしている私がいる。

 数年前から年3回実施される英検を受験するようになり、現在目指している準2級の試験は、私にとっては難しく不合格の通知が来るたびに「もうやめよう」と思うのだった。

 夫は私の保護者のように、「この本は文法が分かりやすい」とか、「過去問題集も大事」とか言って参考になる本を買ってきてくれた。

 ある時、私は虫の居所が悪かったのだろう。「この本でお父さんが勉強して試験を受けたら? 会場まで案内するから」と自分自身の勉強不足を棚にあげて夫に憎まれ口を言ったことがある。人のせいにするなんてなさけない。しかし、夫は合格が目的でなく、勉強を続けることが大事と言って励ましてくれた。

 その夫が4月になくなり、受験する気持ちも無くなった。8月、初盆で家族や親(しん)戚(せき)の人が集まったとき、「英検は続けて勉強したほうがいい。お父さんも天国で応援していると思う」とすすめられた。

 勉強も手に付かないまま、時間が過ぎていく。明日が試験の日となったとき、応援してくれた夫や家族に背中を押されるように受験することを決めた。試験を受けに行くというだけでも、いろいろと夫のことを思い出させてくれる。

 筆記38問、リスニング30問、0点はないと思うが合格点をとるのも難しい。でも1人で準備をして会場に行くことができる間は続けよう。

 由井和子(80) 大阪府寝屋川市

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