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【痛み学入門講座】熱が出て頭が痛いんです

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発熱と頭痛
発熱と頭痛

 平安時代に書かれた『源氏物語』(夕顔)に「御胸せき上ぐる心地したまふ。御ぐしも痛く、身も熱き心地して、いと苦しく…」とある。「御ぐし痛く」とは頭痛である。つまり、風邪をひいて熱が出たので頭が痛い、との意である。

 今回のテーマは、この発熱と頭痛の関係についてである。いわゆる風邪(ウイルス感染による「かぜ症候群」)に限らず、何らかの感染症によって熱が出た場合に、頭痛を経験される人は少なくないだろう。

 では、まずどうして風邪をひくと熱が出るのだろうか。それはウイルス(アデノやライノ、インフルエンザをはじめとして約200種類以上!)や細菌、真菌などが体内に侵入すると、それらを取り込んでたたき潰す役目を担うマクロファージが発熱物質を分泌することによるのだ。マクロファージとは、血球成分のひとつ(白血球のうちの単球)で、炎症が起こっている部位に急行、そこで侵入した異物を見つけると変化(正義の味方に“変身”と考えていただくとわかりやすい)するものであり、大食細胞とも呼ばれる。そして、この発熱物質が作り出したプロスタグランジンという物質が脳の体温調節中枢に作用し、体温のセットポイントを高温側に移動させることで、体温が上昇するのだ。

 なお、かぜ症候群などの感染症での発熱は、熱によってウイルスの活動性を低下させ、免疫反応を高めるための反応であり、安易に解熱薬を用いてその反応を妨げるべきではない。市販の総合感冒薬に依存しないことが肝要である。

 それでは、熱が出るとどうして頭痛(fever related headache)が引き起こされるのだろうか。少し難しい話になるが、脳を包んでいる膜からの痛み情報を伝える三叉(さんさ)神経が直接的に刺激されること、炎症性メディエーター(プロスタグランジン、ブラジキニン、サイトカインなど)が放出されること、頭蓋(ずがい)内の圧上昇などが原因と考えられている。いずれにしても、この場合の頭痛は「片頭痛」の発作時のように激しい痛みとなることが多い。事実、片頭痛の発作時に用いられるトリプタン製剤(スマトリプタン、ゾルミトリプタンなど)が有効とする報告もある。

 さて、高熱や頭痛に加えて、悪寒、戦慄、筋肉痛を伴う場合には、単なるかぜではなく「インフルエンザ」のみならず「扁桃(へんとう)炎」、「敗血症」などが隠れていることがあり、注意を要する。さらには、意識障害があれば「髄膜(ずいまく)炎」「脳炎」などの中枢神経感染症が疑われる。たかだか風邪だからと、ゆめゆめ油断めされませぬよう、お願いしたい。(近畿大学医学部麻酔科教授 森本昌宏)

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