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【書評】『義のアウトサイダー』新保祐司著 文明支えた人々の悲哀追悼

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新保祐司「義のアウトサイダー」(藤原書店・3200円+税)
新保祐司「義のアウトサイダー」(藤原書店・3200円+税)

 真の文明とは何か、それを問いかける一冊である。著者はその核心に「義」を据えているのだ。義に生きた人々と、著者の魂が語り続ける。その魂の躍動が、読む者の胸に突き刺さってくる。久々に読み応えのある本を読んだ。びっしりと詰められた重力が伝わってくる。実際に、この世を生きた日本人たちが生み出した義の重力が、我々(われわれ)の魂に迫ってくるのだ。日本人の心に沈潜する清冽(せいれつ)な悲しみが喚起されてくるに違いない。

 著者の愛する歴史上の人々には共通項がある。それは、不遇を一顧だにしないということに尽きる。不幸を厭(いと)わぬ勇気と言い換えてもいい。文明社会の中にあって、自分が義だと信ずるもののために、人生を捧(ささ)げた人物たちが本を狭しと舞っているのだ。義によって、文明を支えた人たちの悲哀を著者は追悼しているのだろう。その人々が味わった不幸に、切ないほどの共感を著者は抱いている。義を貫くとは、不幸を抱き締めることである。我々は、それを思い起こさねばならない。

 貫くべき義は、情の上に成り立っている。いや、情を超克したところに存在しているのだろう。私は本書を読みながら、日本的情愛というものを強く感じ続けた。情愛に泣き、情愛の悲しみに沈む者にして、初めて義を貫くことが出来(でき)るのだ。切なさと不幸に寄り添うことによって、初めて義が文明の中を貫徹するのである。日本的情愛をどう超克するのか。それが、本書を著した著者の目的の一つではないだろうか。本当の情愛に裏打ちされた義こそが、文明の将来を担うのだ。

 著者は28年前、その『内村鑑三』によって文壇に登場した。それ以来、私の最も愛する文芸批評家であり続けた。著者を貫く精神には、確固たる「良心」がある。その良心は、歴史を貫徹する民族の雄渾(ゆうこん)な精神にあると感じている。そしてその精神をこそ、著者は「義」と呼んでいるのだろう。著者の愛する人たちが連なる本書は、そういう意味で著者自身の分身なのではないか。著者のもつ「義」が、日本の歴史を貫く「良心」として煌(きら)めいている。(藤原書店・3200円+税)

 評・執行草舟(著述家、実業家)

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